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ニビイロ−第十話−

※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです



フイゴ 40代後半〜50代 「ホムラ」の一族の長
タタラの実父。粗野な言葉遣いや態度ではあるが、家族思いでのんびり者である。
大所帯のホムラ一族を纏め上げる男。人間ではないような巨体。
だが、担当する仕事はロウ付け。(本人曰く「隠居」)
ヨク 40代後半〜50代 「ハコビ/ソラ」一族の長
エンの父親。フイゴとは幼馴染で、よく似た性格をしてはいるが、
ヨクのほうがかなり短気であり、頑固で喧嘩っ早い。
工場内に響くような怒声でよくエンたちを怒っている。
フウ エンの姉。13〜14歳。
穏やかで、少々大人しめではあるが、真の強い優しい姉。
ソラ族の中でも、ソラの力を使うのに長けている。
次期風の巫女候補でもあるぐらいの力と、美貌の持ち主。
エータ エンの兄 中学2、3年生ぐらい。
見た目は、エンの生き写しのようだが、性格はエン以上に活発。
弟と妹を大事にしている。ソラ族の期待の若者であった。
ヅチ タタラの兄 エータと同い年。
エータの親友。タタラにとっては、大好きな兄。
ホムラの頭領の息子という名に恥じない実力の持ち主。
性格的には、同級生のエータの前では多少優等生に見えるが、
冒険心や好奇心が旺盛な少年。
幼エン 幼いエン
タタラにお兄ちゃんぶりたい、やんちゃな男の子。
いつか、兄や父のように立派なソラの男になりたいらしい。
幼タタラ 幼いタタラ
この頃はまだ、鉄を扱うことも無く、両目とも健在。
ちょっと内気な女の子
チクロ フイゴの長男 イガタ、ヅチ、タタラの兄。
年齢で言えば高校3年生〜二十歳前後。
いろいろとめんどくさがりでマイペースな性格ではあるが、
ホムラ一族の長男と言う事に誇りと責任を持っており、堅実に物事を考えている。
イガタ フイゴの次男 タタラとヅチの兄。チクロの弟。
年齢で言えば高校1、2年生ぐらい。
兄弟で一番しっかりしている。(父いわく、性格は母似)
父や兄を支えるような職人になりたいと、日夜努力を続けている。
ゲンコ タテシ一族の若者。
当時まだ二十歳前後。
チクロの親友であり、よきホムラの理解者。むしろ、フイゴ一家の一員のようなもの。





時代・世界観
舞台背景など
高度科学(高度工学?)と魔法がまだ共存している時代。
舞台となる、工業都市・ニビは、世界でも有数の工業都市。
そこで作られるものは、高評価を得ていた。

その街で暮らすものたちは、ほとんどの職業ごとに、一族に分かれている。
ホムラ一族 フイゴ率いる炎の一族。
炎を扱う事に長けており、またそれを生業とする一族。
フイゴの娘、タタラが頭領代理。
ハコビ/ソラ一族 ヨク率いる空の一族。
風を読む事に長けている。空輸、または運搬艇を使った資材運びを
生業としている。
ヨクの息子、エンは、若手のまとめ役。
タテシ一族 ゲンコの一族。
大工仕事や建設、いわゆる「建てる事」を生業とする一族。
ゲンコは、この中でも期待されている若手。
ソラフネ 飛行機のようなもの。空を飛ぶ船。
ニビの街では、これや準ずる物を盛んに作っている。
兵器等を積み込んだ"戦艦”も作られる。
ソライス
(エアースクーター)
ソラフネと同じ構造で、空を走る。
見た目はバイクのタイヤが無いバージョンみたいなもの。
エンもよく乗っている。
ツクラレ いわゆるサイボーグ。
四肢を亡くした者は、その代わりに機械義肢をつけられるが、
痛みを取り払い、すぐに機械義肢を元の身体のように動かせる代償として、記憶を奪う。







ナレ 「ホムラ一族の長男の旅立ちの決意、そしてソラの一族の長女の決意。
 様々な思いが行き交いながらも、何事も無く、平和に時は流れていた。
 あれから二ヵ月半、ホムラ一族の長男・チクロが旅に出て、およそ二ヶ月が過ぎた」
−例のガラクタ置き場−
エンとタタラは無邪気に走り回って遊んでいる。
そして、それを見守りながら、フウは本を読み、その横でヅチはぼんやりと空を眺めている。
エータは研修を終えて職場のほうに行ってしまい、一緒に居る時間が減ったのだ。
フウ 「ヅチ、あんまりボウッとしてると、風の神様に魂抜かれるわよ?」
ヅチ 「…え?」
フウ 「ソラの一族の言い伝えよ」
クスッと笑う。ヅチがそこまでぼんやりしていることは、稀だからだ。
ヅチ 「…はぁ…エータはもう、仕事してるのに…僕は親父殿に怒られてばかりだ…」
フウ 「あら、おじ様はあなたのこと、本当に褒めてらしてよ?
 この間あった時だって…」
ヅチ 「でもさぁ…僕はこのままで本当にいいんだろうか…。
 チクロ兄は旅立ってしまったし…それでイガタ兄はもっと働くようになって…」
兄弟の中で、自分だけが取り残されたような気分になっている。
フウ 「あら、でもあなたはタタラの良いお兄ちゃんじゃないの」
ヅチ 「僕は…自分自身が何をしたらいいか、全然解らないんだ」
フウ 「あなたには、たくさんやる事があるじゃないの。
 見えていないだけだわ。あなた自身が気付かなければ、時間はすぐに過ぎてしまうものよ」
ヅチ 「たとえば?」
フウ 「タタラの面倒、お兄様たちの分までちゃんと見ること。
 あとは、一人前のホムラの男になること…もっと勉強して、もっと大人になる事…あとは…」
ヅチ 「後は…僕、フウを迎えに行くよ。大人になって、ソライスにうまく乗れるようになって」
フウ 「……」
ヅチ 「フウは僕のお嫁さんになる人だから」
ナレ 「ソラの一族の娘、フウ。
 あと数日後には、風の民の神殿で、『風神の花嫁』となってしまう身。
 それを迎えに行くのは、果たして、誰の役目なのか…」

ナレ 「その頃、ニビの街の南西にあるトドガタケ山の裾野。トドガタケ平原。
 静かに…息を潜めて向かってくる大隊があった…それは、東国・リューモウの軍隊である。
 当時リューモウと、西国アセキハは、北国ロギザをどちらが侵略するか…と言う戦争をしていた。
 そして、アセキハはその頃、ニビの街にソラフネを始めとする、多くの兵器を発注しており、
 兵力が敵軍に備わる前に、その大元であるニビの街を破壊するのが目的だ」
1メートルほどに伸びた草むらに身を隠しながら、黒装束の集団が、ジリジリとニビの街に向かって動いている。

ニビの工場内、第一資材置き場。
地下にある資材置き場である。広さは約700u。
天井二箇所に大きな、直径20メートルほどの穴が開いている。
そこから運搬艇が行き来しているここには、工場内で使われる資材が置かれている。
ヨク 「よーし、エータ、次はこれを運んどけ!」
エータ 「はいよ!」
研修が終わり、晴れて仕事を始められたのが、嬉しい。
鉄の原材料である、鉄鉱石が山盛りにされた、高さ1メートル、幅1.5メートル、横75センチほどの籠を、
運搬艇の、フォークリフトのツメに似た部分を突き刺して持ち上げる。(これは慎重な作業)
エータ 「……と、これはどこだっけ、親父」
ヨク 「第一製鉄所だ、フイゴんとこに持ってけ」
エータ 「解った!」
急いで運搬艇を急浮上させる。
ヨク 「安全確認を怠るな!いいか、ぜってぇ気ぃ抜くんじゃねぇぞ!!」
晴れて息子が現場に出る事ができたのは嬉しいが、心配で気が気で無い。
エータ 「解ってるって!」
下で父が言う事に、答えながらあがって行くが、見上げた空がいつもと違うことに気がつく。
エータ 「…!親父…!」
ヨク 「どうした」
引き返してきた息子の表情が、いつもと違う。
エータ 「……空が」
ヨク 「…あぁ…なんか居るな…街の外に大勢」
エータ 「…知らせてきて良いか?…ババ様が皆に知らせてるかも知れねぇけど」
ヨク 「あぁ、行って来い…こりゃ厄介な事になりそうだ」

第一製鉄所
ホムラの者たちは、鉄を打ち続けている。
一番奥にある、一際大きな炉の前、フイゴが鉄を打っている。
そこから少し離れた炉の前で、イガタは父の様子を見ている。
ナレ 「大量の汗を流しながらも、真剣な眼差しで鉄を打ち続けるフイゴの顔は、炎に照らされて、赤い。
 ホムラの男達ががなり声で歌う鉄打ちの唄と、炎の燃え盛る音、鉄を打つ音、蒸気が噴出す音などが流れる中、
 イガタはずっと、父の姿を見ていた。」
フイゴ 「どうしたぁ……」
息子の視線には気づいているが、顔を向ける事無く、延々と打っている。
イガタ 「…いや」
フイゴ 「一休みするんだったら、あっちに母ちゃんの弁当があるぞ」
イガタ 「なぁ、親父殿」
フイゴ 「ん?なんだぁ?」
イガタ 「……なんでもない」
やっとでこちらを見た父に、何故かほっとしたような笑顔を浮かべて、イガタは再び槌を手にする。
フイゴ 「なんだ、まぁ無理はすんなよ」
イガタ 「解ってる…」
〜回想〜
チクロが旅立つ前の夜。
チクロの部屋で、イガタは兄と最後の一時を、酒を酌み交わしながら過ごしている。
チクロ 「イガタよぉ」
イガタ 「なんだ、兄様」
チクロ 「俺が居なくなったら、後を頼むぜ。お前が頼りなんだ」
イガタ 「……あぁ」
チクロ 「ヅチやタタラの面倒もそうだが……何より俺が心配してるのは、親父殿のことだ」
イガタ 「……」
チクロ 「親父殿は、ホムラの誇りだ。俺が尊敬できる、この世でたった一人の父親だ。だがな…
 親父はたまに、仕事に熱中する余りに、鉄に吸い込まれそうになるんだ」
イガタ 「……鉄に?」
チクロ 「…親父ほど、ホムラの神に愛された男はいねぇんだとさ。
 鉄打ってる時には、たまに声を掛けてやれ。
 ホムラの守り神は、時として俺達を襲う、祟り神ともなる…その事を忘れるなよ」
〜回想終了〜
イガタ
(心の声)
『兄様………親父殿は……』
 父の背中を見つめる。
父の背中は広く、たくましい。その背中が、イガタ…ホムラ四兄弟をはじめ、一族にとっては頼もしい存在ではある…が…。
その背中を見ていると、兄の言葉が心に響き、胸を締め付ける。

ナレ 「再びガラクタ置き場には、もう、リューモウの軍が襲い掛かっている。
 砲弾や、銃撃の嵐の中、逸早く異変を感じたフウが、結界を張って、子供たちを守っていた」
フウ 「我等を守りし、大いなる風の神…英雄・ストリよ…今こそ我に、愛しき者達を守る力を与え給え…」
ナレ 「ゴォッと一陣の竜巻が、兵士達を空へと巻き上げて行く。
 だが、兵士たちは、後から後からどこかからまるで蛆虫の大群のように湧き出てくる」
ヅチ 「っ…!フウ!ここはもう逃げよう!!」
フウ 「逃げるわけには行かないわ!私には、この子たちを守る義務がある…!!」
ヅチ 「だけど…だけどそれじゃぁ君が死んでしまうじゃないか!!」
フウ 「決まってなんて居ないわ!!死ぬなんて…誰が決めたの?!」
幼エン 「姉ちゃん!怖いよぉ!」
タタラと共に、ヅチに抱えられながら、姉の背中に叫ぶ。
フウ 「エン、いい子だから…もうちょっと我慢していて。お姉ちゃん、頑張るから…」
いつもの、優しい声に戻って。弟たちには怖い思いをさせたくない。
ナレ 「詠唱無しで、風の巫女候補は力を発動させていく。
 この街を制圧するためだけに、メガトン級のソラフネと、リクフネ(戦車)がここまできていた。
 少女は一人、戦っていた。
 『この街を守るのは、風の巫女としての使命』…『幼い子供らを守るのは、姉である自分の使命』、
 そして『愛するヅチを守るのも、自分の使命』と自らに言い聞かせながら…」
幼タタラ 「兄様っ…フウ姉さまが死んじゃう!」
ヅチ 「逃げよう!フウ!」
フウ 「駄目!私が逃げてしまったら…この人たちを街に行かせてしまう!そんな事したら、父様たちの仕事が!!」
ナレ 「何としてでもここで食い止めようとするが、敵の数が圧倒的に多すぎる上に、
 例え、強大な力を持ち、呪文を知っていたとしても、実戦で使うのは、少女にとっては初めての事。
 不利な状況だと言うのは、明らかなことであった」
フウ 「キャァァァァ!!!」
ナレ 「一瞬の隙を付いて、敵の砲弾が、子供たちの傍に落ちる。
 跳ね返された魔力は、彼女に襲いかかる」
ヅチ 「くっ…ホムラを守りし、偉大なる炎の神・プラーマよ…我にその通力を与えたまえ…クリークヌチ・プラーミャ!!」
ナレ 「少年が使ったのは、不慣れな呪文。
 この街の子供たちは、護身用に、ある程度の年齢になると、
 それぞれの一族の持つ力を利用してしか使えない、一族独自の呪文を教わる。
 炎の柱が、九本、ガラクタ置き場の地面から天を突くように立ちのぼる」
エータ 「フウ!ヅチ!エン!タタラ!無事か?!」
街はもう、その頃には、ソラフネなどがガラクタ置き場に来ているのがバレていて、大騒ぎになっている。
他の者たちに退却の促した後、エータはここに大急ぎできた。
ヅチ 「エータ!!お願い!エンとタタラ…フウだけでもつれて逃げて!!」
エータ 「ヅチ!お前はどうするんだよ!?」
ヅチ 「僕はここで…こいつ等を食い止める!フウがやりたかった事、代わりに僕がやる!!」
エンとタタラを、エータの運搬艇の荷台に乗せて、走り出す。
エータ 「待て!無理だ!お前には無理だ!!」
幼エン 「兄ちゃん!姉ちゃんがっ…姉ちゃんがぁ!」
幼いエンが指差した方向では、姉に向けて機関銃が発射されようとしているまさにその時。
エータ 「フウーーーーーーーーーー!!」
(SE)機関銃の音
フウ 「兄様!エンを…エンを連れて逃げてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
機関銃の銃弾の雨が、彼女を襲う。
ヅチ 「フウ!!」
炎の壁を出して、倒れた彼女の体を守る。
ナレ 「ヅチの使った炎により、ガラクタ置き場は火の海に包まれていた。
 その炎や煙のせいで、エータは二人を見失っていた」
エータ 「フウ!ヅチ!早くこっちにこい!!逃げるぞ!!」
ヅチ 「だめだよ、フウが…フウを今動かしちゃったら!!」
フウ 「…良いの…ヅチ、逃げて」
ヅチ 「ダメだよ…フウを置いて逃げるなんて…僕には出来ないよ…」
フウ 「お願いだから…あなたは生きて居なきゃダメ…足が亡くなろうとも、手が亡くなろうとも…あなたは生きて居なければだめ…
 私たちは……この、ニビの街の子なんだから……」
ヅチ 「そんなの……」
涙でもう、フウの顔がぼやけてしまっている。
だが、フウは、なぜか幸せそうに笑っている。
フウを安全なところに隠し、涙をぬぐうと、敵に向かって走り出す。
エータの運搬艇は、火の海の上を心許無げに漂っている。
その間にも、リューモウの軍隊は、街を目指して進軍して行く。
エータ 「ヅチーーーーーー!!フウーーーーー!!どこに居る!!返事しろ!!」
幼エン 「お姉ちゃん、お姉ちゃん…」
姉が死んでしまったと思っているのと、この状況が怖くて泣いている。
まだ幼かったエンには、泣くことしか出来なかった。
エータ 「泣くな!エン!お前は男だろうが!!」
幼エン 「でもぉ…!姉ちゃんがっ…姉ちゃんがぁぁ」
エータ 「馬鹿!!お前は父ちゃんみたいなソラの男になりたいんだろ?何そんなに泣いてんだよ!!」
幼エン 「…」
ナレ 「幼き者達の必死の抵抗にも容赦せず、リューモウのソラフネは砲撃を開始する」
幼タタラ 「ヅチ兄様ぁ……ヅチ兄様ぁぁぁ!」
少し、運搬艇の高度が下がったのを見計らって、兄の元に飛び降りていく。
エータ 「待て!タタラ!そっちにいっちゃダメだ!!」
(SE)砲撃の音
ヅチ 「タタラ!!こっちにきちゃダメだよ!エータのところに戻って!!」
幼タタラ 「やー!兄様と一緒が良い!!」
ヅチ 「我侭言わないで!!」
ナレ 「その瞬間、二人の近くに砲弾が落ちる」
(SE)砲弾の着弾した音
ヅチ 「危ない!!」
咄嗟に、タタラの上に覆いかぶさって守ろうとするが、その上に、衝撃で周りの瓦礫が降って来て、二人を埋めてしまう。
エータ 「ヅチーーーーーーーーーー!!タタラーーーーーーーーーーー!!」
と、そこに、ヨクの運搬艇が、護身用の銃を発射しながら飛んでくる。
少し離れた所から通信機にて、声をかける。
ヨク 『エータ!!』
エータ 「親父ぃ!!フウが…フウがぁぁぁ!!」
ヨクを見た瞬間に、安心したのか、緊張の糸が切れてしまい、泣いてしまう。
ヨク 『話は後で聞く!!エータ!こっちに来い!!』
エータ 「親父ぃ…!」
泣き虫では無くなったと言うが、本質的な部分は、人間は変わるものではない。
だから、エータは本来は泣き虫のままのエータ。
通信機に向かって泣いている。
ヨク 『泣くのは後だ!ヅチとタタラはどうした?!』
エータ 「フウが…フウが、街を守るって…だからヅチもそれを手伝って…タタラはヅチを追っかけてって…二人は今、瓦礫の下に……」
ヨク 『フウは!?』
エータ 「さっきまで頑張ってたんだ…だけど…だけど、あいつ等機関砲を打って来やがって…」
エータが指差した方向、瓦礫の影に、フウが寝かされている。
それを見て、ヨクは一瞬絶望した表情になるが、すぐに持ち直す。
ヨク 『フウを拾ってくる…もう少し行った所に離れとけ…俺もすぐ行く!!いったん避難するぞ!』
エータ 「解った!」
ヨクはフウを迎えに行く。

ヨク 「…フウ」
運搬艇から降り、変わり果てた姿の愛娘に声をかける。
フウ 「……とう…さ…ま…」
やっと父が来てくれた、安心感。
ヨク 「…頑張ったな…」
フウ 「…わた…しは…とうぜんの事を……した、まで…」
ヨク 「もういい、しゃべるな…今、医者に連れてってやるからなっ…しゃべるなよ?!なっ」
自分の上着をかけてやり、大事に抱えて運搬艇の荷台に載せる。
フウ 「父さ…ま…エンに……ねえちゃんは……エンを守れてうれしいって…だから、もう泣かないでって……」
最後の力を振り絞って、父に伝える。姉として、出来る事の最期の言葉。
ヨク 「……」
涙をこらえて、何度も頷く。
フウ 「父様…母様……ありがと……ございます…」
いつものように、幸せそうな笑みを浮かべて、フウは神の元に旅立った。
ヨク 「……」
項垂れるが、そうもしてられないので、運搬艇を浮かせて、エータに指示した場所に急ぐ。
ナレ 「ソラの父、ヨクが、息子と約束した場所へ向かうと、そこも戦場と化していた。
 敵の機関砲などを避けて飛びながら、何とかエータは持ちこたえていた」
エータ 「親父ぃ!!逃げろ!!逃げてくれ!!」
こちらに飛んでくる父の姿を確認して、少しうれしそうになるが、そうもしていられない。
ヨク 「こっちに来い!俺が誘導するとおりに飛べ!!」
エータ 「エンをそっちに運ぶ!もうこいつの燃料ももたねぇ!!」
ナレ 「エータの運搬艇は、もう燃料が限界に来ていた。と、言うのも護身用の銃を撃ちすぎたためである。
 フラフラと、空中を漂いながら、慎重に父の元に近づいていく」
ヨク 「もう少しだ!」
ナレ 「あともう少し…あともう少しで辿り着く…と、その時だ」
(SE)機関砲の音
エータ 「ぐっ…」
ナレ 「無情にも、ソラの少年の体を、機関砲が貫いた」
幼エン 「兄ちゃん!!」
ヨク 「エータ!!」
ナレ 「胸を貫かれた少年は、気力だけで片手で操縦桿を、もう片手には、弟を抱いて、父の元まで進む」
幼エン 「兄ちゃん…?兄ちゃん、血ぃ垂れてるよ…兄ちゃん、血が止まらないよ…」
兄の体から流れる血が、自分にもかかって来る。
体温を失いつつある兄の身体…死の恐怖が、幼いエンを襲う。
エータ 「…もうすぐだ…もうすぐだからな、エン…」
幼エン 「兄ちゃん、血が出てるよっ…兄ちゃん」
エータ 「大丈夫だ、兄ちゃんは不死身なんだ。なんたって、エンの…兄ちゃんなんだから」
幼エン 「やだよ…姉ちゃんもう、いないのに……兄ちゃんも居なくなったらやだよ…やだよぉ…」
エータ 「泣くな!…な、エン、泣くなよ。ソラの男は泣き虫じゃダメなんだぞ」
やたら兄ぶって、言い聞かせるように。
幼エン 「やだよぉ、兄ちゃん…」
ナレ 「最期の力を振り絞って、ようやく少年たちを載せた運搬艇は、父の元まで辿り着く」
ヨク 「…エータ…よく、頑張ったな…」
エータ 「…親父、エンを頼む……」
ナレ 「少年は、最期の力を振り絞り、弟を父に渡した。
 それが終わると、完全に力尽きた少年と、短い間ではあったが幼い主に尽くした運搬艇は、地面へと落ちて行く」
ヨク 「…っ…」
愛娘と長男を一度に失った悲しみ。
だが、今は悲しんで居る暇はない。
ヨク 「…エン、しっかり掴まってろよ…」
幼エン 「…うん!」
ナレ 「街に向かいかけたその時、彼らの前に、2台のソライスが現れる」
チクロ 「ソラのおやっさん!どうしたんだ、これ…」
ナレ 「旅に出ていたはずのチクロだった。
 その横には、ゲンコも居た。街の状況を、ゲンコが伝えると、チクロは大急ぎで戻ってきたのだろう」
ヨク 「チクロ…」
チクロ 「ヅチは…タタラは…?!親父たちは無事なのか?!」
ヨク 「それはわからねぇ…だが…ヅチとタタラは…瓦礫の下だ…」
チクロ 「…フウとエータは…」
ヨク 「……」
首を横に振る。チクロは、地上を見て、運搬艇が一機墜落しているのと、ヨクの運搬艇の荷台に寝かされているフウを見て状況を把握する。
チクロ 「……ヅチとタタラを助けに行って来る」
ヨク 「…ゲンコ、エンを頼んだぞ」
ゲンコ 「はい…」
チクロ 「いや、おやっさんは戻ってくれ。ここでみすみす死んでもらちゃぁ困る!」
ヨク 「だが…」
チクロ 「エンのそばに居てやってくれ!泣いてんじゃねぇか!!ここから七時の方向は、まだ侵攻されてねぇから
 …そっちまでエンを運んでやってくれ! おふくろたちを頼む!!行くぞゲン!!」
ゲンコ 「あぁ!!」
ナレ 「若者たちは、ソライスを駆ると、瓦礫に向かって飛んでいく。
  ヨクはチクロの助言通りに運搬艇を走らせた。
 …空から見下ろすニビの街は、変わり果て…今は戦場と化していた…」
















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