ニビイロ−第八話−
※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです
ニビ | 男 | 25歳前後 一応主人公 詳細不明のサイボーグ。(四肢機械) 本人に関する記憶を一切失っている。 ニビの街の工場では、用務員兼事務の手伝い(いわゆる雑用)の仕事をしている。 ツクラレの管理も任されるようになった。 基本的には、口数は少なく、穏やかな性格をしている。 エンとタタラを穏やかに見守っているようなタイプ。 ヅチと被りでお願いします。 |
エン | 男 | 20歳前後 「ハコビ/ソラ」の一族の一人 ハコビの頭領の息子。 へヴィスモーカーでドライなようで結構熱血(?)タタラとは家が近所で、幼馴染。 エアフォークで物資を運んで空を飛び回る。 タタラとはよくからかい合う仲ではあるが、若干タタラの兄のような表情を見せることもある。 エータと被って下さい。 |
タタラ | 女 | 20歳前後 「ホムラ」の一族の一人 ホムラの頭領の娘。 女伊達等に鍛冶場で働いている。 口調が男っぽいだけで、中身は列記とした女である。 基本的男らしさを意識した感じで喋る。 |
※できれば、かわいさを取っ払ってください。 イメージ的には、もののけ姫のサンが近いかも? |
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フイゴ | 男 | 40代後半〜50代 「ホムラ」の一族の長 タタラの実父。粗野な言葉遣いや態度ではあるが、家族思いでのんびり者である。 大所帯のホムラ一族を纏め上げる男。人間ではないような巨体。 だが、担当する仕事はロウ付け。(本人曰く「隠居」) |
ヨク | 男 | 40代後半〜50代 「ハコビ/ソラ」一族の長 エンの父親。フイゴとは幼馴染で、よく似た性格をしてはいるが、 ヨクのほうがかなり短気であり、頑固で喧嘩っ早い。 工場内に響くような怒声でよくエンたちを怒っている。 |
フウ | 女 | エンの姉。13〜14歳。 穏やかで、少々大人しめではあるが、真の強い優しい姉。 ソラ族の中でも、ソラの力を使うのに長けている。 |
エータ | 男 | エンの兄 中学生ぐらい。 見た目は、エンの生き写しのようだが、性格はエン以上に活発。 弟と妹を大事にしている。ソラ族の期待の若者であった。 |
ヅチ | 男 | タタラの兄 中学生ぐらい。 エータの親友。タタラにとっては、大好きな兄。 ホムラの頭領の息子という名に恥じない実力の持ち主。 |
幼タタラ | 女 | 幼いタタラ この頃はまだ、鉄を扱うことも無く、両目とも健在。 ちょっと内気な女の子 (大人タタラと被りでお願いします) |
幼エン | 両 | 幼いエン タタラにお兄ちゃんぶりたい、やんちゃな男の子。 いつか、兄や父のように立派なソラの男になりたいらしい。 |
ナレ | ||
チクロ | 男 | 名前だけは出てくるが、タタラとヅチの兄。長男 |
イガタ | 男 | 名前だけは出てくるが、タタラとヅチの兄。次男 |
時代・世界観 舞台背景など |
高度科学(高度工学?)と魔法がまだ共存している時代。 舞台となる、工業都市・ニビは、世界でも有数の工業都市。 そこで作られるものは、高評価を得ていた。 その街で暮らすものたちは、ほとんどの職業ごとに、一族に分かれている。 |
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ホムラ一族 | フイゴ率いる炎の一族。 炎を扱う事に長けており、またそれを生業とする一族。 フイゴの娘、タタラが頭領代理。 |
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ハコビ/ソラ一族 | ヨク率いる空の一族。 風を読む事に長けている。空輸、または運搬艇を使った資材運びを 生業としている。 ヨクの息子、エンは、若手のまとめ役。 |
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タテシ一族 | ゲンコの一族。 大工仕事や建設、いわゆる「建てる事」を生業とする一族。 ゲンコは、この中でも期待されている若手。 |
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ソラフネ | 飛行機のようなもの。空を飛ぶ船。 ニビの街では、これや準ずる物を盛んに作っている。 兵器等を積み込んだ"戦艦”も作られる。 |
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ソライス (エアースクーター) |
ソラフネと同じ構造で、空を走る。 見た目はバイクのタイヤが無いバージョンみたいなもの。 エンもよく乗っている。 |
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ツクラレ | いわゆるサイボーグ。 四肢を亡くした者は、その代わりに機械義肢をつけられるが、 痛みを取り払い、すぐに機械義肢を元の身体のように動かせる代償として、記憶を奪う。 |
ナレ | 「ニビの街の工場…ソラフネ用の工路に続く飛行場。 雲ひとつ無い青空の下、一隻の巨大なソラフネが、旅立ちの時を待っていた。 そこに、エンとニビ、そしてフイゴ、ヨク、タタラの姿があった。 エンとニビは、任された仕事の為、今日、ここから旅立つのだ」 |
エン | 「親父、行って来る」 |
ヨク | 「あぁ、ヘマすんじゃねぇぞ。ソラフネの操縦桿握ってるときゃ、どんな事があってもよそ見すんじゃねぇぞ」 |
エン | 「親父ぃ、その言葉何度聞いたよ」 |
ヨク | 「てめぇが手放しで操縦しようとするからだろうが!」 |
エンに大型のソラフネを操縦させるのが、まだ心配でしょうがない。 | |
フイゴ | 「まぁ、少し遊んでくると良い。 ニビ、お前はもう少し外の世界を見て来い」 |
わが子を送り出すかのように、優しく。 | |
ニビ | 「はい!それじゃぁ…行ってきます」 |
タタラ | 「ニビ、エンが駄目そうなときには、逃げて来い」 |
エン | 「何だとぉ?!」 |
タタラ | 「ソラフネの操縦、まだあんまり得意じゃないくせに」 |
エン | 「うるせぇ!今回で完璧に覚えてやらぁぁぁ!!」 |
タタラ | 「ほーう、じゃぁ帰ってくるときに、アクロバット飛行を見せてくれるのだろうな」 |
ちょっと小ばかにするように。 | |
エン | 「上等だ、コラぁ!三回捻り見せてやらぁ!」 |
ニビ | 「エン、その時、僕も乗ってるよね?」 |
タタラ | 「あぁ、その時はニビは降ろして貰え」 |
エン | 「タタラぁぁぁぁ?!」 |
ヨク | 「……お前ら」 |
いつも以上にテンションが高い「子供達」に苦笑しつつ。 | |
フイゴ | 「無事に帰って来いよ、俺が言いてぇのはそれだけだ。 折角の旅だ、怪我とかしちゃぁつまんねぇだろ」 |
エン | 「あぁ、おやっさんも元気で!」 |
ニビ | 「お土産たくさん持ってきます…あ、もう時間だ」 |
ヨク | 「エン、ぜってぇ操縦桿からは手ぇ離すなよ。後、データだけを頼りにするんじゃねぇ。 自分の目で周りの状況を確かめながら行け」 |
エン | 「解ってるって!」 |
ナレ | 「こうして、ニビとエンは旅だって行った。 二人がこの街から旅立つことには、意味があった。 そう、【あの日】が来るからである」 |
タタラ | 「……行ってしまったな…」 |
空を見上げ、二人を乗せたソラフネを見送っている。 | |
フイゴ | 「まぁ、おめぇもちょっとは休め。 あいつ等が帰ってくるまでで良い…」 |
タタラ | 「親父殿………」 |
フイゴ | 「母ちゃんがおめぇの好きなもん何でも作ってやるって言ってたぞ。 秋刀魚の生姜煮とかな。後の事は父ちゃんに任してさっさと帰んな」 |
タタラ | 「でも…」 |
ヨク | 「タタラよぉ、もうすぐ【あの日】がくる。まぁ、しばらくのんびりしたって、誰もおめぇを怒りゃしねぇよぉ」 |
フイゴ | 「たまにゃ父ちゃんも鉄打ちたくなっちまったんだよ」 |
ある事が理由で、フイゴは鉄を打つことをやめてしまった。 | |
タタラ | 「……じゃぁ、帰る。父様、おじ様。ありがとう」 |
ペコリと頭を下げると、タタラはその場から去って行く。 | |
ヨク | 「……でかくなったなぁ、タタラもよう」 |
フイゴ | 「まぁ、でかくもなるさ……」 |
ヨク | 「さて、俺らも行くか」 |
フイゴ | 「あぁ、そうだな……」 |
ヨク | 「まさか、セガレの墓参りをする事になろうとはなぁ」 |
フイゴ | 「……何度行っても慣れねぇな」 |
ヨク | 「慣れてたまるか…」 |
ナレ | 「父親達は、深くため息をついた。 エンとタタラ、二人とも、彼らにとってはたった一人残された、愛しい我が子。 二人には、上に何人かずつ兄弟がいたのだが、何れも先の戦争にて、没している」 |
ナレ | 「そう、<先の戦争>…それは、ニビの街にとっては、まさに青天の霹靂……寝耳に水の自体だったのだ。 ニビの街は、工業都市である。それと同時に、我々の世界のように、軍事工場が各国にあったわけではない為、 貴重な軍事工場として、『戦闘には巻き込まない』という、条約が結ばれていた…はずであった」 |
ニビの街のはずれのガラクタ置き場。 ここは、廃棄され、リサイクリングに回される前の運搬艇や、工場で使われていた機械などが、無造作に置かれている。 そこは、子供たちの恰好の遊び場である。 今は夕方。夕日に照らされてあたり一面、赤い。 |
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幼エン | 「タタラー!ここまでおいでー!」 |
追いかけっこをしている。片手には笛。タタラが父に買ってもらったおもちゃである。 | |
幼タタラ | 「あーん、返してよぉ」 |
足の速いエンに追いつけない。 | |
フウ | 「そんなに走っちゃ危ないわよ?エン、タタラに返してあげなさい」 |
少し離れた場所で、本を読みながら、二人の子守をしている。二人を見ながら笑顔を浮かべている。 | |
幼タタラ | 「エンー!待ってよう!…あっ」 |
草に足を引っ掛けて転んでしまう。 | |
幼タタラ | 「……」 |
泣き出してしまう。 | |
フウ | 「大丈夫?タタラ……エン、あなた、お兄ちゃんなんだから」 |
転んだタタラを立たせて、汚れをはたいてやる。 | |
幼エン | 「だってさー、姉ちゃん」 |
フウ | 「だってじゃないの!……あーぁ、血が出ちゃってる…」 |
あくまで、小さい子を怒る感じに。 | |
幼エン | 「だって……だって……」 |
大好きな姉に怒られてしまったのと、タタラが泣き止まないのでちょっとの罪悪感で、エンも泣き出す。 | |
フウ | 「ほら、エンも、ごめんなさいは?」 |
幼エン | 「だって…だってぇ…」 |
フウ | 「……もう……リムノーガリチーニエ…」 |
リムノーガリチーニエ……ソラの一族に伝わる、軽い怪我を治療する呪文 | |
エータ | 「エン!また泣きべそかいてんのかー?」 |
ちょっとからかうように。フウの後ろに立っている。 | |
幼エン | 「あ、兄ちゃん!」 |
大好きな兄の登場に、パッと泣き止んで兄の元に走る。 | |
フウ | 「兄様、今日はもう終わりましたの?」 |
エータ | 「まぁな!でも、この分だと来週からでも本当に現場にいけるかもしれねぇって、親父が言ってたぜ?」 |
現場に出る前に、訓練のようなものをどの一族も最低3ヶ月ぐらいは受ける。 ヅチもエータもその最中。 |
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幼エン | 「すごいや、兄ちゃん!」 |
フウ | 「兄様は父様に似て、やっぱり運搬艇を操るのが上手いもの。きっと良いソラになれますわ」 |
エータ | 「ありがとな!」 |
幼タタラ | 「エータ兄様、お仕事行くの?お空飛ぶの?」 |
エータ | 「あぁ、そうだ!今度タタラも乗せてやるよ!」 |
幼エン | 「兄ちゃん、俺も!俺も!」 |
エータ | 「わかってる!じゃぁ、これから一緒にどっか散歩行くか!」 |
フウ | 「兄様…」 |
ちょっと遠慮がちに。自分はもう、エンとタタラよりもかなり大きいので、わがまま言ってはいけないとちょっと思っている。 | |
エータ | 「フウも一緒な!」 |
フウ | 「はい」 |
にっこり嬉しそう。 | |
そこにタタラの兄・ヅチが現れる。 | |
ヅチ | 「あぁ、やっぱりここに居た!」 |
幼タタラ | 「兄様!お帰りなさぁい!」 |
嬉しそうに走りよる。 | |
ヅチ | 「ただいま!……チクロ兄は?」 |
幼タタラ | 「チク兄様、ゲン兄様の所にごようがあるって」 |
ヅチ | 「チクロ兄…またか…」 |
本日、ホムラ一族の長兄・チクロは仕事が休みなので、タタラの面倒を見るように言われていた。 が、チクロは基本的にマイペースな人間なので、こうして、フウに任せて遊びに行ってしまうこともしばしば。 ちなみに、幼タタラのいう「ゲン兄様」はゲンコのことである。 |
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フウ | 「でも、タタラは今日もとってもいい子にしてたわよ?ねぇ、タタラ」 |
フウは子供好き。 | |
幼タタラ | 「うん!」 |
ヅチ | 「いや、そういう問題じゃなくてね…フウ?」 |
エータ | 「いいじゃんいいじゃん、エンはタタラのことがだーい好きなんだよな?なー、エン?」 |
またもやからかうように。エンの幼い恋心(?)を知っているのか知らないのか。 | |
幼エン | 「兄ちゃんのバカァァァァァ!!」 |
右ストレートを決めようとするが、頭を抑えられる。 リーチが足りず届かなくて、じたばたとしている。 |
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エータ | 「おー、兄ちゃんに食って掛かろうとは」 |
笑っている。 | |
ヅチ | 「で、イガタ兄は?」 |
幼タタラ | 「イガ兄様は、父様が御用があるから来なさいっていったから」 |
ヅチ | 「そっかぁ…」 |
フウ | 「まぁ、良いじゃないの」 |
エータ | 「そうそう、ヅチ、そんなん気にしてたら禿げるぜぇ?」 |
ヅチ | 「…ハゲ?!…言うなぁぁぁ!!」 |
エータ | 「お、お前の気づかないところにハゲがあるぞ?」 |
ヅチ | 「うそ?!」 |
エータ | 「うっそー♪」 |
ヅチ | 「この野郎〜!!」 |
エータがヅチをからかうのはいつものことである。 だが、二人とも親友同士。実際、仲が良い。 |
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フイゴ | 「おーい、おめぇ等ぁ、いつまで遊んでんだ。帰るぞー」 |
家に帰りがてら、父親たちが迎えに来ている。 フイゴの横には、ヅチとタタラの兄・イガタが居る。 |
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幼タタラ | 「父様ぁ!」 |
嬉しそうに父に向かって走っていき、大きな腹にダイブする。 | |
ヨク | 「おめぇ等知ってるかぁ?ここら辺、もうちょっと暗くなったら、子供等を頭からバリバリ食っちまうお化けが出るんだぜぇ?」 |
幼エン | 「お化け…出るの?」 |
まだ小さいので、お化けが怖い。 | |
ヨク | 「あぁ、そうさ。お前みたいなチビ助は頭からペロリ…一息だろうなぁ」 |
幼エン | 「やだぁぁぁぁ!父ちゃん、俺、帰るぅぅぅぅ!!」 |
いつも父の<お化け>話に怖がらされているエン。父に抱きついて大泣きする。 | |
フウ | 「エンはいつまでたっても甘えん坊ねぇ」 |
幼エン | 「だってだってぇ」 |
エータ | 「親父ぃ、いい加減にそれやめろよー」 |
ヨク | 「何言ってやがんだ、おめぇもエンぐらいの時にゃ『お化けこわーい、お化けこわぁぁい!』って母ちゃんに抱きついてベソかいて、 挙句、その夜にゃ、ねしょんべん垂れてたじゃねぇかよ」 |
ヅチ | 「そうだったんだ」 |
エータ | 「そんなこと、ここでバラすなぁぁぁぁ!!親父のそのドスの利かせ方がやたらこえぇっつーの!!」 |
ヨク | 「あーたーまーかーらー、ぶぁりぶぁりとなぁ…」 |
内心ビビって居るエータの心を読み取り、念を押すように。 | |
エータ | 「親父の阿保ー!!」 |
ヨク | 「親に向かって阿保とは何だ!このスカポンタン!」 |
エータ | 「阿保だから阿保だって言ったまでだ!このクソ親父!」 |
フイゴ | 「バカなことやってねーで、さっさと帰るぞ」 |
ヨク | 「そうだな」 |
フイゴ | 「よーし、タタラぁ、肩車してやるぞー」 |
タタラを抱え上げて、肩に乗せる。 | |
ヅチ | 「親父殿、今日の夕飯はなんだろう」 |
フイゴ | 「母ちゃん次第だなぁ」 |
幼タタラ | 「タタラ、秋刀魚の生姜煮が良い〜!」 |
ヅチ | 「タタラ、それ昨日も食べただろ?」 |
幼い妹、大好物だけを食べたいと言う幼い要望に、苦笑しながら。 | |
ヨク | 「よし、俺等も帰るぞー」 |
幼エン | 「父ちゃん、父ちゃん、お化け本当に出るのぉ?」 |
エータ | 「ばーか、出るわけねぇだろ」 |
フウ | 「でも、兄様ついこないだまで信じてらしたわよね」 |
エータ | 「お前もいらん事言うな!!」 |
ナレ | 「それぞれの家族の影が、夕日に照らされて、長く飛びている。 笑い声が絶えないこの二つの家族に、今、戦禍が襲いかかろうとしていた」 |
ナレ | 「−そして、現在ー タタラが、家の自室のベッドの上で寝転んでいた。 うつ伏して寝ている。その目元には、涙の跡があった。 ベッドの横、サイドテーブルには、目覚まし時計と、発光石のランプ…そして、写真(カガミエ)立てがおかれている。 そのカガミエには、タタラの三人の兄と、エン、エンの兄姉が7人で写っている。 その写真の、幼いタタラは、末兄・ヅチに抱えられて楽しそうに笑っている。 今はこんな笑みはできなくなっている」 |
タタラ | 「…兄様…チク兄様、イガ兄様…………ヅチ、兄様…」 |
フイゴがこっそりと部屋に入ってくる。 娘のことが心配でしょうがない。 |
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フイゴ | 「タタラぁ…すまねぇなぁ……」 |
寝台のそばに座り、タタラの寝顔を見ている。 | |
フイゴ | 「…俺は、情けねぇ父ちゃんだ……おめぇがこれだけ意地張ってんのは、全部、俺が悪いんだ」 |
ナレ | 「父は、自分を責めていた。 先の戦争以来、愛娘・タタラは自分を責めているかのように、我武者羅に生きてきた。 それをそばで見ていた父は、やりきれない思いを抱えている」 |
フイゴ | 「チクロ、イガタ…ヅチ…おめぇ等、俺を許してくれるか」 |
ナレ | 「写真に写る、息子たちは皆笑顔を浮かべている。 4つの笑顔、それはもう、フイゴの目の前にそろうことは無い」 |
フイゴ | 「………タタラ、父ちゃんが悪かった」 |