ニビイロ−第六話−

※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです


ニビ 25歳前後 一応主人公
詳細不明のサイボーグ。(四肢機械)
本人に関する記憶を一切失っている。
ニビの街の工場では、用務員兼事務の手伝い(いわゆる雑用)の仕事をしている。
基本的には、口数は少なく、穏やかな性格をしている。
エンとタタラを穏やかに見守っているようなタイプ。
今回、ほとんど台詞が無いので、ナレと被りでも可。
ミナワ
(ヒナギク)
両脚がツクラレ。
色街にある名店『サク屋』でも人気がある遊女だった。
心中した男女の生き残りである。
ミナワの時は透き通るような声、ヒナギクの時には張りのある声でお願いします。
ゲンコ 三十代前半 「タテシ」の一族の青年。
三年前に結婚したばかりで、まだ言葉をしゃべり始めた娘がいた。
腕は確かで、ニビの街でも期待されている若手だった。
ある事故に巻き込まれて、ツクラレとなった。
ミナカミ 40代後半〜50代
ミナモ一族の一人。ミナワの父。
かなり厳格な性格をしているが、娘への愛は捨て切れていない。
シズク 40代。
ミナカミの妻、ミナワの母。
息子を溺愛していたが故に、彼が亡くなってからは完全に発狂している。
元々は、子煩悩で優しい母親。
セキ 20代前半
ミナモ一族の青年。
ミナワの兄であり、恋人だった。数年前に二人で心中しようとして彼だけ死んでいる…?
波の無い湖のような、穏やかな性格をしていた。
客と被りでお願いします。
ミナモ1
ミナモ2
ミナモ一族。
ミナワの元へ来た客。
ロリコン…と言うか、妹属性が好きな、こちらの世界で言えばアキバ系な感じ。
ミナモ1と被りでお願いします。
女将 ヒナギク(ミナワ)の居る『サク屋』の女将。
シズクと被りでお願いします。
ナレ





時代・世界観
舞台背景など
高度科学(高度工学?)と魔法がまだ共存している時代。
舞台となる、工業都市・ニビは、世界でも有数の工業都市。
そこで作られるものは、高評価を得ていた。

その街で暮らすものたちは、ほとんどの職業ごとに、一族に分かれている。
ホムラ一族 フイゴ率いる炎の一族。
炎を扱う事に長けており、またそれを生業とする一族。
フイゴの娘、タタラが頭領代理。
ハコビ/ソラ一族 ヨク率いる空の一族。
風を読む事に長けている。空輸、または運搬艇を使った資材運びを
生業としている。
ヨクの息子、エンは、若手のまとめ役。
タテシ一族 ゲンコの一族。
大工仕事や建設、いわゆる「建てる事」を生業とする一族。
ゲンコは、この中でも期待されている若手。
ソラフネ 飛行機のようなもの。空を飛ぶ船。
ニビの街では、これや準ずる物を盛んに作っている。
兵器等を積み込んだ"戦艦”も作られる。
ソライス
(エアースクーター)
ソラフネと同じ構造で、空を走る。
見た目はバイクのタイヤが無いバージョンみたいなもの。
エンもよく乗っている。
ツクラレ いわゆるサイボーグ。
四肢を亡くした者は、その代わりに機械義肢をつけられるが、
痛みを取り払い、すぐに機械義肢を元の身体のように動かせる代償として、記憶を奪う。







ニビ
(心の声)
『記憶……僕の過去。
 記憶を手に入れられたら、きっと幸せだ…って、ずっと信じていたのに…
 あの人は泣いていた…』
ミナワ
(回想)
『兄様…なんで…ミナワだけが…ごめんなさい…ごめんなさい…』
ナレ  夕方、ニビはトボトボと自宅への道を歩いている。
ツクラレである、金属の四肢が、今まで感じたことのないほどに、重く感じられた。

赤く照らされた街。公園からは子供たちのはしゃぐ声と、
一人の大人の声が聞こえてくる。
ゲンコ 「そぉら、こっちだぁ!」
子供たちとサッカーのようなことをしている。
楽しそうに笑っている。
それは以前と変わらぬ笑顔である。
こちらを見ているニビに気づいて、かけて来る。
ナレ ツクラレになってからのゲンコは、タテシ一族の集落に戻った。
が、カンナとノコの待つ家には戻っていない。
ゲンコ 「どうなんだい、仕事のほう」
子供たちが帰ったので、ニビとゲンコは公園のベンチに腰掛けて話す。
そこからは街が一望できる。
ゲンコが失った記憶は、ここ6年ぐらいの記憶。
(家族…カンナと結婚し、ノコが生まれた記憶は全て失われた←だが、6年以上前からの付き合いのニビの記憶はある)
ニビ 「なんとなく…ですけど、迷ってますよ」
本音。
仕事を任されて、うれしいのはあるが、反面辛い。
ゲンコ 「…そうか」
ニビ 「………」
    二人の間に沈黙。結構長い沈黙。
ゲンコ 「俺、なんかこの写真捨てられねぇんだよな」
胸元のポケットから出されたのは、一枚の写真。
ゲンコ 「きっと、これ、俺がツクラレになる前の家族なんだよな…俺、カンナと結婚できたのかな…」
そっと、写真のノコとカンナに触れる。
ニビ 「………」
本当は「ご家族ですよ」と言いたいところだが、
仕事の規則により、記憶を呼び戻すような事はしていけない。
ゲンコ 「思い出そうとすると、ツクラレになった部分が、ひどく痛むんだ…。
 だから、思い出さなければいいのかって…思うときがある……」
ニビ 「思い出さないほうが良いなんてそんな……」
ゲンコ 「いや、でも、俺は絶対思い出す。 何が何でも…きっと、あの子は俺の娘だから…
 それまで、会いに行くわけにはいかねぇよ…」
目が覚めたときに、自分の上によじ登ってきた赤ん坊が、この写真にいる。
ニビ 「……ゲンコさん」
ゲンコ 「…ん?やっぱり迷ってるのか。仕事で」
ニビ 「えぇ…なんっていうか…ツクラレは思い出したら、家族に受け入れてもらえるんだろうか…とか
 悩んじゃってて……」
ゲンコ 「んー…一概には言えないだろうが……」
ニビ 「……」
ゲンコ 「やっぱり、受け入れて貰えるもんなんじゃねぇかな。
 家族なんだし…例えどんな事情があったとしても…」
ニビ 「……ありがとうございます、ゲンコさん」
答えを貰えたようで、ニビは少し満足した表情で立ち上がる。
ゲンコ 「もう行くのかい?」
ニビ 「えぇ、ありがとうございます」


ミナワ 「…本当に、行くの…?」
ナレ 「次の日、ニビの街を、ミナワを載せた車椅子を押して歩くニビの姿があった」
ニビ 「…えぇ、会えばきっと、お父様もお母様も許してくれますよ。
 だって、ミナワさんのご両親なんですよね。家族なんですから、きっとわかってくれますよ!」
良い結果である事を疑わない。
ニビは、そういう「ゴタゴタ」があると言うのをまだ知らない。
ミナワ 「………」
ツクラレになるまでのミナワが生きていた街。
久々に見る街を、見回すこともなく、うつむいている。



ミナモ一族の住む集落。
ニビの街の西に位置する大きな湖のほとりに、その集落がある。
ここは、ニビの街で使われる水を管理している
そこに踏み入れる事を、ミナワは恐れていた。
ミナカミ 「……お帰りください」
ナレ 「ミナワを連れて、彼女の実家に訪れたニビに対して吐き出されたのは、酷く冷たい言葉だった」
ニビ 「…ですが、ミナワさんは貴方のご家族です」
ミナカミ 「……」
車椅子の上、俯いているミナワを見る。
娘が可愛くないわけではない。むしろ本当は抱きしめたい。
ニビ 「……」
ミナカミ 「娘は…最大のタブーを犯してしまったんです。
 それさえ無ければ、私はこの子の帰りを、無条件で喜んでいたでしょう。抱擁していたでしょう。
 ですが、そういうわけにも行かないのです」
ミナワがまだ、兄とそういう関係だと発覚する前は、親馬鹿な位に、娘を溺愛していた父親。
目の前にいる愛娘を素直に抱きしめることができないのが歯痒い。

家の中からは女の笑い声が聞こえる。
まるで、一家団欒を楽しむ母親のような…
ニビ 「…ですが…」
ミナカミ 「とにかく…お引き取りください」
シズク 「さぁ、セキ、ミナ…ご飯ですよ。今日のご飯は貴方達の大好きな…」
ミナカミ 「…妻もあのとおり…息子が亡くなってからは……」
シズク 「ミナワ、こっちにいらっしゃい。ほら、だめじゃないの…女の子はいつも綺麗にしてなさいって言ったでしょう?」
母は元々は子煩悩な優しい母であった。
ミナワもその兄「セキ」もどちらも溺愛していた。
ミナワ 「……かあ…さま…」
涙が零れる。ミナワも両親をとても愛している。
少し、道を間違えただけ。
シズク 「もうすぐ父様も帰ってらっしゃいますからね。
 二人とも、ちゃんといい子で待ってなきゃいけませんよ」
ミナワ 「…ごめんなさい……」
ミナカミ 「ミナワ…父様は、お前のことが今でも大切だ…だが、母様は……」
ニビ 「……」
記憶に無い、自分の父親を思い浮かべている。
こんな風に、自分のことを思っていてくれたのだろうか。
ミナカミ 「ミナワ……」
ミナワ 「父様……ごめんなさい」
ミナカミ 「………」
本当は、娘を許して家に上げたい。が…
シズク 「だめじゃないの、ミナワ。ちゃんと兄様の言うこと聞かなきゃ」
ミナワ 「…父様…」
ミナワの心の中には、まだ家族で楽しく暮らしていた日々が思い出されている。
優しい両親、そして兄の笑顔。
笑いで溢れていた家族。だが、今は……

〜回想〜
湖のほとり、燃え盛る何本もの松明。
追い詰められた恋人達。
その先頭には、ミナカミ。
セキ 「父上!俺とミナは…!!」
背中の後ろに、ミナワを庇うようにしている。
ミナカミ 「黙れ!!澱みを知らぬ水のように清くあれと言うミナモ一族の掟を忘れたか?!」
ミナワ 「父様…許して、お願い…私…」
腹を庇うようにしている。ミナワの腹の中には……
ミナカミ 「……子供が……居るのか?」
ミナワ 「……」
決意を秘めた表情で、頷く。
ミナモ1 「なんと言うことだ…!」
ミナモ2 「清らかな水の如しと言う我がミナモ一族の名に泥を塗るような真似を…!」
ミナモ1 「殺してしまえ!!」
ミナモ2 「殺してしまえ!穢れたものは排除しなければいけない!」
ミナモ1 「殺してしまえ!殺してしまえ!」

口々に、殺してしまえと言いながら、一族の者たちが詰め寄る。
ミナワ 「………!!」 二人とも表情は、絶望した…と、言うよりも覚悟を決めた表情。
セキ 「……クッ…!」
ナレ 「ミナモの手を取って、セキは走り出す」
ナレ 「ミナモ一族の集落から5キロほど走ったところにある崖。
そこからは、大きく広がる海が望める。
切り立った崖の先、恋人達の姿と、それを追い詰めるミナモ一族の一群。
二人に残されたのは、たった一つの選択肢…」
セキ 「……ごめんな…ミナ…」
ミナワ 「兄様…」
セキ 「…この子にも…悪いことをした…」
ミナの腹を、愛おしそうに撫でる。
ミナワ 「……」
ミナモ1 「さぁ、どうする」
ミナモ2 「どうする?」
セキ 「……生まれ変わったら……きっと……」
来世に希望を託し、ミナワを抱えて崖から飛ぶ。
ミナワ 「兄様…」

回想終了
ミナカミ 「……ちょっと待って居なさい、ミナワ」
何かを思いついたようで、父はクルリと踵を返して、家の中に入っていく。
ミナワ 「……父様……」
ミナカミ 「…これを、もって行きなさい。せめてもの…父様と母様との…お前への想いだ」
ミナワ 「……これは…」
ナレ 「父から手渡されたのは、一対の耳飾り。ミナモ一族の伝統である。
 ミナモ一族は、独り立ちの際、両親から片方ずつ耳飾を貰い受ける。
 それはその子供から子供へと受け継がれる」
ミナワ 「…父様…」
ミナカミ 「不本意だが…もう、お前は独り立ちしなさい。
 ここには、もう戻ってきてはいけない。
 少なくとも……母さんが正気に戻るまでは………
 母さんが正気に戻ったら、またじっくり話し合おう。
 お前は、私の大切な娘なんだから……」
ミナワ 「……ありがとう、父様…」
まだ、自分のことを、自分の子供だと認めてくれる事が、うれしい。

〜再び回想〜
ナレ 「ミナワの記憶が戻った経緯。
 それは、ほんの些細な事。
 いつものように客を取っていたときの事だった」
「お兄様って呼んでみて…」
ヒナギク
(ミナワ)
「あははっ、なんだいそれ」
「いいから…ほら、『お兄様』」
ヒナギク 「『お兄様』」
冗談交じりで。
「ヒナギク…」
ヒナギク 「お兄様……兄様…」
ナレ 「上に覆い被さる男、その姿に、失われた筈の記憶の残像が重なった」
ヒナギク 「兄様…?兄様………兄様…?!……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ナレ 「その悲鳴に呼応するように、両脚にはめられていた筈の義肢が外れ、赤い布団を、彼女の鮮血が染める。
 ……これが、彼女の記憶が戻った経緯である」

回想終了。
ナレ 「それから少しして、ニビの街の喫茶店。
そこに、ニビとミナワの姿があった。
ニビが深刻な顔をして、俯いているのに対し、ミナワは晴れやかな顔をしていた」
ニビ 「…ミナワさん」
ミナワ 「…ありがとう。ニビさん…」
ニビ 「…え?」
ミナワ 「最後に父様に会えただけでも良かったわ」
ニビ 「……本当に、そう思いますか?」
ミナワ 「あら、何故?」
ニビ 「本当は、お父さんとお母さんの所に戻りたかったんじゃ…」
ミナワ 「いいの……母様をこれ以上苦しませちゃいけない。
 父様にも母様にも、たくさん迷惑かけちゃったもの…これ以上、迷惑かけるわけにはいかないわ」
ニビ 「……」
ミナワ 「私…仕事を探さなきゃ」
ニビ 「やっぱり働くんですか?」
ミナワ 「だって私、行く所が無いんですもの」
状況に反して、ニコニコと笑っている。
ニビ 「確かにそうですけど…」
ミナワ 「あら、それとも……貴方がお嫁に貰ってくれるのかしら?」
クスクスと笑う。元々はお茶目なお嬢様。
ニビ 「えぇ?!」
SE (ガシャッ)コーヒーのカップがひっくり返る音。
ニビ 「あっつっ!!」
ミナワ 「あららっ…大丈夫?!」
ハンカチをもって、車椅子を移動させて、シャツにかかったコーヒーを拭く。
拭いているうちに、さらに何かを思い出したようで、もっと明るい顔になる。
ニビ 「ごめんなさい!せっかく綺麗なハンカチなのに…!」
ミナワ 「ふふ…フフフフッ」
ニビ 「…ミナワさん?」
ミナワ 「なんか、ニビさん見てると、兄様を思い出しちゃって」
ニビ 「…お兄さん…ですか」
ミナワ 「えぇ…父様と私の話で、わかるかも知れないけど……兄様と私は……」
ニビ 「え?」
ミナワ 「恋人同士だったの。お腹に赤ちゃんも居たのよ」
明るく話す。
ニビ 「…赤ちゃん…って…えぇええ?!」
ミナワ 「そんなに驚くことじゃないわよぉ」
ニビ 「でも…」
ミナワ 「ありがとう。これで、踏ん切りがついたわ」
ニビ 「…どうするんですか?これから」
ミナワ 「んー…母様が落ち着いてくれたら、また話し合おうと思うの。
 それと仕事は…両脚が無いけど、すわり仕事ならできるでしょう?
 だったらそういう仕事探すわ。出来れば、住めるところもあれば良いのだけれど…」
ニビ 「それだったら、ムスビ一族のところに行けば良いですよ。
 僕もそこに連れてってもらいましたから、最初」
ムスビ一族。
職安みたいな役割を主にこなしている。
こちらの世界で言う「派遣会社」にも似たような感じ。
ミナワ 「ありがとう…」
ニビ 「僕だって、まったく記憶が無いのに、最初から職も貰えたし……
 家はフイゴ親方が面倒見てくれたけど……でも、どうします?」
自分の状況が、酷く恵まれている、そう思ったニビは、気まずそうにミナワに聴き返す。
ミナワ 「ふふっ…住み込みの所、探すわよ。そしたらニビさん……」
ニビ 「はい」
ミナワ 「お友達になって下さるかしら?」
ニビ 「勿論です!!」
ミナワの笑顔の美しさに、ニビは初めて胸が高鳴るのを抑えきれない。
たぶん、これ、初恋なのではないか…?
ミナワ 「きっと、そうなったら楽しいわ…たくさんお喋りしたり、一緒に本を読んだり…」
ニビ 「僕の友達……エンとタタラもきっと、喜びます!
 エンも良い奴だし、タタラも女の子一人で優しい子だし、きっと本当に仲良くなれますよ!」
ミナワ 「そうね……本当に、そうね…」
これから訪れるであろう、良き日を思い浮かべ、そして噛み締めている。
ナレ 「二人は、笑顔をかわす。
 きっと、明日から楽しい日々が待っている。
 その事を……とても喜んでいた。」
「火事だあぁぁぁぁ!!ミナモの集落が火事だあぁぁぁ!!」
ナレ 「男の声とともに、それを知らすサイレンがけたたましく、街中に鳴り響く」
セキ 「あははははははは…やったっ!やったぞぉ!俺はやったんだぁぁぁぁ!!」
ナレ 「その報せに右往左往する街の住人たちの中を逆走する男が居た。 
 狂った笑い声を上げながら、走り去る。
 髪を伸び放題に伸ばし、泥などに塗れた身体。服も所々破けている。
 かなり変わり果てた姿をしているが……その男は、紛れも無く…」
ミナワ 「兄様…っ!!」
その姿を認め、絶望する。
セキ 「あはははははははははははははははは…!!ミナワと俺の子を殺した罰だ!
 みんな堕ちろ!灰に還れ!!あはははははははは!!」
ナレ 「群衆の中、哄笑する男の声だけが、鮮やかにニビとミナワの耳に突き刺さる」
ミナワ 「…何故…何故なの…兄様っ…!!」


ニビ
(心の声)
『ミナワさんの兄……セキはその後、再び崖から身を投げた…。
 と、言うのも、それから幾日もしないうちに、海岸に彼の死体が打ち上げられて居るのが発見されたからだ。
 ミナモ一族は、ほぼ全員無事だった。
 ……ほぼ、と言うのは、亡くなったのは、ミナワさんのご両親…のみ。
 炎に包まれた家の中、ミナワさんのお母さんは、必死で二人の子供の積もりだったであろう人形を守っていたと言う。
 そして、それを救いに入って行ったミナワさんのお父さんも……。
 焼け跡から、抱き合って亡くなっているのが発見された……そう、エンが教えてくれた。
 焼け焦げたご両親の間からは、その人形が二体………綺麗に残っていたと言うことも……そして、ミナワさんは……』
場面は色街の『サク屋』
自分の部屋で、化粧をしているヒナギク。
女将 「ヒナギク、ご指名だよ。カシさんがお待ちかねだ!」
ヒナギク 「あいよ!」
ニビ
(心の声)
『ツクラレに戻る道を選んだ。
 僕と交わした言葉は、多分全く覚えてない……だけど…
 お父さんから貰ったあの耳飾りを、いつも着けているそうだ…』










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