ニビイロ第三話
−なる時・前編−
※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです。
ニビ | 男 | 25歳前後 一応主人公 詳細不明のサイボーグ。(四肢機械) 本人に関する記憶を一切失っている。 ニビの街の工場では、用務員兼事務の手伝い(いわゆる雑用)の仕事をしている。 基本的には、口数は少なく、穏やかな性格をしている。 エンとタタラを穏やかに見守っているようなタイプ。 |
今回、ほとんど台詞が無いので、ナレと被りでも可。 | ||
エン | 男 | 20歳前後 「ハコビ/ソラ」の一族の一人 ハコビの頭領の息子。 へヴィスモーカーでドライなようで結構熱血(?)タタラとは家が近所で、幼馴染。 エアフォークで物資を運んで空を飛び回る。 タタラとはよくからかい合う仲ではあるが、若干タタラの兄のような表情を見せることもある。 |
タタラ | 女 | 20歳前後 「ホムラ」の一族の一人 ホムラの頭領の娘。 女伊達等に鍛冶場で働いている。 口調が男っぽいだけで、中身は列記とした女である。 基本的男らしさを意識した感じで喋る。 |
※できれば、かわいさを取っ払ってください。 | ||
フイゴ | 男 | 40代後半〜50代 「ホムラ」の一族の長 タタラの実父。粗野な言葉遣いや態度ではあるが、家族思いでのんびり者である。 大所帯のホムラ一族を纏め上げる男。人間ではないような巨体。 だが、担当する仕事はロウ付け。(本人曰く「隠居」) |
ゲンコ | 男 | 三十代前半 「タテシ」の一族の青年。 三年前に結婚したばかりで、まだ言葉をしゃべり始めた娘がいる。 腕は確かで、ニビの街でも期待されている若手である。 少々親ばか気味だが、自分の仕事には妥協はしないタイプ。 |
カンナ | 女 | 二十代後半 「タテシ」の一族の女性 ゲンコの妻。 気性は荒いが、ゲンコとノコを深く愛している優しい女性。 怒るとゲンコを殴る癖がある。 |
ノコ | 女 | 一歳半ぐらい。 まだヨチヨチ歩きの赤ん坊。最近言葉を覚えたばかり。 父・ゲンコに非常に懐いている。(パパっ子) ※名前だけ出てきますが、今回は出てきません。 |
ナレ | 両 |
時代・世界観 舞台背景など |
高度科学(高度工学?)と魔法がまだ共存している時代。 舞台となる、工業都市・ニビは、世界でも有数の工業都市。 そこで作られるものは、高評価を得ていた。 その街で暮らすものたちは、ほとんどの職業ごとに、一族に分かれている。 |
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ホムラ一族 | フイゴ率いる炎の一族。 炎を扱う事に長けており、またそれを生業とする一族。 フイゴの娘、タタラが頭領代理。 |
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ハコビ/ソラ一族 | ヨク率いる空の一族。 風を読む事に長けている。空輸、または運搬艇を使った資材運びを 生業としている。 ヨクの息子、エンは、若手のまとめ役。 |
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タテシ一族 | ゲンコの一族。 大工仕事や建設、いわゆる「建てる事」を生業とする一族。 ゲンコは、この中でも期待されている若手。 |
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ソラフネ | 飛行機のようなもの。空を飛ぶ船。 ニビの街では、これや準ずる物を盛んに作っている。 兵器等を積み込んだ"戦艦”も作られる。 |
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ソライス (エアースクーター) |
ソラフネと同じ構造で、空を走る。 見た目はバイクのタイヤが無いバージョンみたいなもの。 エンもよく乗っている。 |
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ツクラレ | いわゆるサイボーグ。 四肢を亡くした者は、その代わりに機械義肢をつけられるが、 その代わり、それ以前の記憶を一切失う。 ニビもその一人。 |
ナレ | 「ホムラ一族の住む集落。 その入り口にある門の前で、タタラの父・フイゴと何人かのタテシ一族が作業をしながら話し込んでいる。 門が老朽化しているために、改築作業をしているのだ」 |
フイゴ | 「わりぃなぁ、無理言って」 |
ゲンコ | 「いや、おやっさんの頼みなら喜んで!」 |
そう言って、作業していた手を止めて汗を拭く。 浅黒い肌に、短く刈り込んだ黒い髪。頭には白い布を巻いている。 大工仕事で日々鍛えられているのか、屈強な肉体。 |
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フイゴ | 「嬢ちゃんとカンナは元気でやってんのか」 |
そこらへんに腰掛けて、タバコを取り出して火をつける。 | |
ゲンコ | 「あぁ、最近かみさんもますます口うるさくなって来やがって…」 |
そうは言うものの、ゲンコは嬉しそうに笑っている。 | |
ゲンコ | 「ノコも最近言葉を覚えるようになりやしてねぇ」 |
フイゴ | 「ほう、そりゃぁ可愛い盛りだなぁ」 |
ゲンコ | 「父ちゃん父ちゃんって…まだちゃんと言えねぇけど… そりゃぁもう…家に帰りゃぁ、俺の後をヨチヨチついてくるんでさぁ。 それがもう、可愛くて可愛くて…カガミエ見ます?」 |
カガミエ…写真の事。 ポケットから家族の写真を取り出して、フイゴに手渡す。 その顔は、もう、『親ばか』な顔である。 |
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フイゴ | 「娘はデカくなんのがはえぇからよ。しっかり見ておけ」 |
ゲンコ | 「タタラ嬢ちゃんも、でかくなったよなぁ。 つい最近まで『とうさま、とうさま』ってチョコチョコ、おやっさんの後ろをついて回ってたのが、 今じゃ頭領代理かぁ…俺もおっさんになるはずだぁ」 |
とうさま〜のくだりは、若干口真似入る。 | |
フイゴ | 「まぁ、口だけは一人前だがな…ありゃぁまだガキだ」 |
タタラ | 「誰がガキだ!」 |
今日は休みなのか、タタラは私服姿。 仕事中に頭に巻いている布は巻いておらず、長い髪を結い上げ、ワンピースを着ている。 片手にはお茶が詰まった薬缶、片手には茶碗と茶菓子の乗った茶碗を持っている。 |
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フイゴ | 「お前はまだガキだろうが!」 |
笑いながらタタラの頭を撫でる。 | |
タタラ | 「ガキじゃねぇぇ!!」 |
手に持っていたものを乱暴にその場に置き、父のわき腹に蹴りを入れる。重い蹴りだ。 | |
フイゴ | 「フブォ…!!」 |
ゲンコ | 「おやっさん?!」 |
フイゴ | 「…っはは、っと、まぁ…あんなに可愛かったタタラも今じゃぁ、重い蹴りを放つキラーマシーンになっちまって…」 |
わき腹をさすりながら、何故か感慨深げに言いながら、憤然と立ち去るタタラを見送る。 | |
ゲンコ | 「おやっさん…俺…ノコにはキックもパンチも教えない方向の教育するわ…」 |
フイゴ | 「あぁ…そうしておけ」 |
ゲンコ | 「もっとも…うちのかみさんに似ちまったら、そんなことも言えねぇんだけどな…」 |
感慨深げな表情をしているフイゴの横で、何故か遠い目をして、ゲンコは言う。 二人とも、「恐妻家」と言う絆で結ばれている。(笑) |
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ゲンコ | 「ほんじゃ、俺はこれで失礼しまさぁ」 |
フイゴ | 「あぁ、ありがとなぁ」 |
ゲンコ | 「いや、いいんっすよ。ちょうどおやっさんとゆっくりと話したかった所だし」 |
フイゴ | 「まぁなぁ…お、そういやぁ、今度でっけぇ仕事が入ってるって聞いたが、どこでやるんだぁ?」 |
ゲンコ | 「家の補修工事ってだけでさぁ…西の国…コオタガの金持ちの爺さんの家なんですが」 |
ちょっと謙遜するように。でも、任されたことが嬉しくてしょうがない。 | |
フイゴ | 「あー…サカギのじじぃんトコか」 |
ゲンコ | 「へぇ…なんでも、ぜひ俺に直してもらいたいとか…」 |
フイゴ | 「あのじじぃのご指名ってこたぁ。そうとう認められたって事だぁ。 あのじじぃは半端な奴にゃケチつけて二度とよばねぇからなぁ…今度はうちの修理もたのまぁ」 |
ゲンコ | 「へへっ…おやっさんにそう言って貰えると…嬉しいなぁ」 |
照れ笑いをしながら、頭の後ろをザシザシ掻く。 ゲンコには父はいないので、あるときの仕事場では、フイゴが父親代わりに世話をした事もある。 それ以前に、ゲンコの父親とフイゴとは、ヨクも合わせて幼馴染の親友同士だったのだ。 なので、ゲンコとフイゴとその家族は非常に縁が深い。いわばゲンコにとっては、フイゴが第二の父親のようなものである。 |
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ナレ | 「それから幾日か経っての昼食時間、エンとタタラはいつもの場所で昼食をとっている。 今は、ニビの姿は無い。とある講習会に出ているからだ」 |
タタラ | 「ニビは、何の講習会に出ているんだ?」 |
エン | 「なんか、新しい仕事を任されるらしいぜ?今まで簡単な雑用ぐらいしかしてなかっただろ」 |
タタラ | 「まぁな…ニビはニビで結構どじなところがあるからな」 |
エン | 「ま…あのころに比べれば、大分マシなほうだろうが。ここで大事なのは、働けるかどうか…だろ?」 |
タタラ | 「…あぁ、そうだな…」 |
エン | 「で…どんな仕事なんだろうなぁ、ニビの仕事」 |
タタラ | 「さぁ…」 |
青い空に、エンのタバコの煙と、工場の煙突から吐き出される煙が昇っていく。 | |
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ナレ | 「数日後の夕方――― ニビの街から少し離れた山道を、ソライスで走る男の姿があった。 荷台には大工道具が詰まった大きな袋が載っている。 ゲンコが例の仕事を終え、帰路を急いでいるのだ」 |
ソライス…(バイクのようなもの。宙に浮いて走る) | |
ゲンコ | 「はぁ…褒められたし、お礼もいっぱい貰えたし…たまにゃカンナにもなんか買ってやろうかなぁ」 |
男の上着、右の胸ポケットには、今日の仕事で貰えた報酬がぎっしりと詰まっている。 いつも他の仕事で貰える報酬よりも、かなり良い実入り。 |
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ゲンコ | 「そうだ、ノコにもなんか買ってやろう!絵本が良いかなぁ…最近どこにでも歩いてっちまうから、新しい靴もいいなぁ…」 |
SE | (銃弾の音) |
ゲンコ | 「!?」 |
ナレ | 「ゲンコが振り向くと、そこには見慣れぬ格好をした男たちが二手に別れ、銃を構えてお互いを狙っていた。 どうやら、よくある盗賊の小競り合いらしい」 |
ゲンコ | 「やべっ…!!」 |
ナレ | 「逃げようとするゲンコの上に、どちらかの軍勢が落とした大きな岩が迫る。 とっさに大工道具を抱え、身を投げ出す」 |
ゲンコ | 「…ぐっ…あぁっ…!!」 |
大岩が、ゲンコの膝から下を押しつぶした。 だが、巻き込まれたゲンコを省みる盗賊たちではなく、ゲンコは一人、岩の下から這いずり出る…が。 |
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ゲンコ | 「…脚…俺の脚が…ぁ…あぁああああああぁぁ…!!」 |
狂ったように叫ぶが、荷物の中からズボンのポケットから零れ落ちた物の中に、家族写真があった。 彼の愛娘・ノコと愛妻・カンナと自分が微笑んでいる写真。 |
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ゲンコ | 「……ノコ…カンナ…」 |
ゲンコは何か、自分の中で腹を決めたらしい。 | |
ゲンコ | 「…今、戻るからな…」 |
男は、大工道具の中に家族写真を入れると、背中に背負って、這い出した。 | |
ナレ | 「ニビ総合病院のとある一室。 そこには、泣き崩れるゲンコの妻・カンナの姿があった。 周りにも、急報を聞き、駆けつけてきた仕事仲間などが集まっている」 |
カンナ | 「何で…なんであんたがツクラレに…なんで…」 |
ゲンコ | 「…すまん…」 |
カンナ | 「あんたなんて、死んじまえばよかったんだ!!そうすりゃ…そうすりゃぁ…!!」 |
ベッドに横たわるゲンコの体に拳を打ち付ける。 | |
ゲンコ | 「いてっ、いてぇ!……すまん、だけど、俺は…また、大工仕事がしたいんだ」 |
カンナ | 「じゃぁ、あたし等はどうなるのさ!!ノコはまだ赤ん坊なんだよ?!」 |
ゲンコ | 「…すまん」 |
カンナ | 「…馬鹿…あんたは本当に…馬鹿だよっl!!」 |
ゲンコ | 「だが、きっと、思い出せるから…すぐに思い出せるから」 |
ツクラレの、その以前の記憶が戻るのは、滅多に無いこと。 | |
カンナ | 「…馬鹿…」 |
泣き崩れ、ゲンコの胸に顔をうずめる。 と、その病室に、一人、誰かが入ってきた。 |
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フイゴ | 「ニビじゃねーか。どうしたぁ、改まった顔して」 |
ニビ | 「…ちょっと、仕事です。おやっさん」 |
カンナ | 「こんなときに…何の用よ?!」 |
ニビ | 「……ゲンコさんがツクラレになる為の、手続きを担当する事になりました。ニビです」 |
カンナ | 「いやぁぁぁぁ!!」 |
妻の嘆きは、届かない。 |