ニビイロ−第一話−

※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです。


登場人物

ニビ 25歳前後 一応主人公
詳細不明のサイボーグ。(四肢機械)
本人に関する記憶を一切失っている。
ニビの街の工場では、用務員兼事務の手伝い(いわゆる雑用)の仕事をしている。
エン 20歳前後 「ハコビ/ソラ」の一族の一人
ハコビの頭領の息子。
へヴィスモーカーでドライなようで結構熱血(?)タタラとは家が近所で、幼馴染。
エアフォークで物資を運んで空を飛び回る
タタラ 20歳前後 「ホムラ」の一族の一人
ホムラの頭領の娘。
女伊達等に鍛冶場で働いている。
口調が男っぽいだけで、中身は列記とした女である。
フイゴ 40代後半〜50代 「ホムラ」の一族の長
タタラの実父。粗野な言葉遣いや態度ではあるが、家族思いでのんびり者である。
大所帯のホムラ一族を纏め上げる男。人間ではないような巨体。
だが、担当する仕事はロウ付け。(本人曰く「隠居」)
ヨク 40代後半〜50代 「ハコビ/ソラ」一族の長
エンの父親。フイゴとは幼馴染で、よく似た性格をしてはいるが、
ヨクのほうがかなり短気であり、頑固で喧嘩っ早い。
工場内に響くような怒声でよくエンたちを怒っている。
 
謎の少女 5,6歳?
ニビの夢の中に頻繁に出てくる少女。
いつも炎に囲まれてぬいぐるみを抱いている。
(出来ればおばちゃんの人被りでお願いします)
おばちゃん 中年女性
ニビ行きつけの屋台(果物などを売っている)を営んでいる女性。
ホムラ一族1 ※以下表記はホムラ1(エンと被りでお願いします)
ホムラ一族2 ※以下表記はホムラ2(ニビと被りでお願いします)
ジム1 (ヨクと被りでお願いします)

ナレーション





時代・世界観
舞台背景など
高度科学(高度工学?)と魔法がまだ共存している時代。
舞台となる、工業都市・ニビは、世界でも有数の工業都市。
そこで作られるものは、高評価を得ていた。

その街で暮らすものたちは、ほとんどの職業ごとに、一族に分かれている。
ホムラ一族 フイゴ率いる炎の一族。
炎を扱う事に長けており、またそれを生業とする一族。
フイゴの娘、タタラが頭領代理。
ハコビ/ソラ一族 ヨク率いる空の一族。
風を読む事に長けている。空輸、または運搬艇を使った資材運びを
生業としている。
ヨクの息子、エンは、若手のまとめ役。
タテシ一族 ゲンコの一族。
大工仕事や建設、いわゆる「建てる事」を生業とする一族。
ゲンコは、この中でも期待されている若手。
ソラフネ 飛行機のようなもの。空を飛ぶ船。
ニビの街では、これや準ずる物を盛んに作っている。
兵器等を積み込んだ"戦艦”も作られる。
ソライス
(エアースクーター)
ソラフネと同じ構造で、空を走る。
見た目はバイクのタイヤが無いバージョンみたいなもの。
エンもよく乗っている。
ツクラレ いわゆるサイボーグ。
四肢を亡くした者は、その代わりに機械義肢をつけられるが、
その代わり、それ以前の記憶を一切失う。
ニビもその一人。






謎の少女 「ねぇ、大丈夫だから…」
炎の中、少女が泣いている。
ニビ
(心の声)
『僕は、いつも夢をみる。夢は同じ内容。
燃え盛る炎、瓦礫の中で女の子が泣いている。
まだ小さな女の子。』
ニビ視点なのか、少女の姿は、
ぼやけていてはっきりとは見えない。
謎の少女 「もう大丈夫だから……」
ニビ
(心の声)
『手には大きな熊のぬいぐるみ。
靴が片方脱げていて、服はもうボロボロだった。
その赤い靴、気に入ってたのにね…。
女の子の顔は、僕からは見えない。
なぜだろう…もう、ぼやけて……』
ニビ 「泣かないで…」
手を伸ばすが、届かない。
  
ナレ 『朝…カーテンの隙間からの日の光を感じて、
ベッドの上の青年は瞼を上げる。
外からは、工場特有の轟音と、下の通りから響く喧騒。
プレス機の轟音、運搬艇が空を走る音、鍛治職人の金属を鍛える音。

 青年はベッドから起き上がると、服を着替えて身支度を済ませ、
玄関の扉を開けて街へと続く長い階段を下りた。
円柱のような建物にグルグルと巻きつく階段を、ひたすらに下りていく。』
ニビ 『ここは工業都市・ニビ。まだ魔法と高度科学が共存している時代。
この都市は世界の中でも一二を争うほどの高度な工業都市。
 職人達が集まり、街は活気付いている。
この街は昼夜問わず動き続けているから、昼も夜もない。
静寂が訪れるとすれば、月に一度の祭りの日か、
生産が完全に止まる時だけだろう。』
階段を下りていくニビ。
階段を降りた通りには、いくつもの屋台が並んでいる。
階段の横にあるのは、果物売りの屋台。
おばちゃん  「おはよう、ニビ。今日もいい天気だねぇ」
ナレ 『ニビ、それは青年の名前。通称だ。
本当の名前を、彼は知らない。しかしこの街では、本名はほとんど意味を成さない。
働ければ、存在を認められる。
この街はほとんどが職業によって部族に分けられるが、
ニビのように何処にも属さない者も少なからず居る。』
ニビ 「おはようございます」
銅のコインを二枚渡すと、
大きな林檎を一つと、水筒を渡される。
おばちゃん 「今日のりんごは、うんと甘いよ」
水筒の中身は日替わり。
いつもフルーツティが入ってる。
ニビ 「今日のは何ですか?」
おばちゃん 「ピーチティだよ。今日のもおばちゃんの自信作!」
ナレ 『次々にお客が来る。ニビは受け取った物をカバンにしまい手を振ると、
工場への道を歩き出した。この通りは、いつも賑やかだ。
昼夜問わず工場は動き続けるから、人の流れも絶えない。
屋台の明かりも消える事がない。』
騒がしい通りを、工場へと急ぐ。
と、上から声が降ってくる。
タタラ 「ニビ、おはよう」
ニビが顔を上げると、一台のスカイスクータが宙に浮いて居る。
前には黒いレンズに、銀色の縁のゴーグルと、皮のジャンバーを着た、ニビより少し年下らしい少年、
その後ろには頭に紺色の布を巻いて、背中に柄の長い金槌を背負った少女が乗っている。
ニビ 「タタラ、エン、おはよう」
タタラは、パッと見は少年のようだが、なかなかに可愛い顔をしていると思う。
澄んだ藍色の大きな瞳に白い肌、桜色の唇。
女伊達らに鍛冶職人として働いて居る為に、筋肉が程よくついた身体。
ニコッと笑うとなんとも無邪気で可愛らしい。
ただ残念なのは彼女の一族の職業病で、潰れた左目を皮の眼帯が覆っていることか。
 エアーバイクをニビの真横に付け、エンはゴーグルを上げる。
切れ長の目、鷹のような眼光を放つ、鳶色の瞳が、ニビを見た。
エン 「ニビ、今日も忙しくなりそうだぞ。親父から連絡があったからな」
少々喉がタバコ焼けしているのだろう、低く掠れた声
ニビ 「そうなの?昨日も結構忙しかったけど……」
エン 「3番工路のソラフネがとうとう出荷されるそうだ。
 その後すぐに、新しい受注のブツの材料を運び込む。今度は例のソラフネよりも
 3倍ぐらいデカいらしいからなぁ……
 今度はもっとデカい大砲をドッシドッシ積み込むらしいぜ?」
ニヤリと笑うと、煙草をくわえて火をつける。
ニビ 「あぁ、そりゃぁソラの親方の怒鳴り声が響きそうだねぇ」
タタラ 「……その材料を作るホムラの身にもなってみろ……また徹夜か。超過労働だ…。
 …あ、そうだ。ニビ、エン…もうちょっと急いでくれるか?」
ニビ 「遅刻しちゃう?」
タタラ 「いや、違う。悪いが、母様から、親父殿に弁当を頼まれてるんだ」
肩からかけていたカバンから、大きなブリキの保温弁当をとりだす。
タタラが食べるにしては大き過ぎる。
ニビ 「また忘れたの?おやっさん」
タタラ 「うん…親父殿にも困ったもんだ」
タタラは苦笑しながら弁当をカバンにしまう。
エン 「おふくろさん、また怒ってただろ。うちまで地鳴りが響いてきたからな」
タタラ 「あぁ……母様が怒ると、親父殿やおじじ殿よりも怖いからな…」
ナレ 「確かに、ニビは何度かその場面に遭遇した事があるが、とてもじゃないが、
生きた心地がしなかった。
それこそ、エンがからかうように、地鳴りが起きんばかりの勢い…
炎の一族の母にふさわしい、業火のような怒り方だ」
エン 「…そう言えば、俺も親父の弁当を届けねぇと」
ニビ 「どこかで食べてるんじゃないかな…? 
 この街にも工場の中にもご飯屋さんや屋台はたくさんあるし…」
ナレ 「ニビの言葉を聞いた瞬間、二人は青い顔をして首を横に振る」
エン
タタラ
「そんな事をしたら、おふくろが…」
「そんな事をしたら、母様が…」
ナレ 「よほど二人は、母を怒らせたくないらしい。
 母親の話しになると、二人は本当に子供みたいになるのがニビにとっては面白いことだった」 
気がつけば、工場の入り口。
駐輪場に、エアースクーターを留め、入り口を通る。
入り口にあるモニターが、出勤した人達を次々に確認していく。
これがタイムカード…と言われるものなのかもしれない。
ここを通れば、モニターに映った全ての人の勤怠が自動で記録されるようになっている。

 門を潜ると、いくつもの入り口がある。
それは、各作業場への階段やエレベーターに続いている。
タタラ 「それじゃぁ、私はここで!」
左から三番目の入り口に向かって走りながら、タタラは手を振った。
エン 「おう!おやっさんに宜しくなぁ!」
それと同じく、五番目の入り口に向かいながらエンも手を振る。
エン 「ニビもタタラもヘマすんじゃねーぞ!!」
ニビ 「うん!」
タタラ 「エンこそ、親父殿に叱られぬようにやれよ」
エン 「バーカ!」
工場の音が響く。
ナレ 「こうして、工業都市・ニビでの三人の一日が始まる。
モグラ一族が地中深くから鉱石を掘り出して、それを鍛えて鉄板や部品にする。
それはホムラ一族の役目だ」
ホムラ一族の仕事場−第1製鉄場−
男達の掛け声、鉄を打つ音などが響いている。
そこで働くもの達は皆、鍛治職人の職業病で片目が潰れていて、いずれも眼帯を着用している。
ホムラ1 「おう、タタラじゃねーか!ちょっとこっち来てくれやぁ!」
建物内は、まるでちくわのような形になっている。第一製鉄場はその上の方に位置している。

吹き抜け部分から下を見ながら、男たちが何かを話している。
タタラ 「どうした?何かあったのか?!」
駆け寄るタタラ。
ホムラ2 「いや、第三工路のソラフネが出荷されるとこだ」
タタラ 「……そうか」
突き放したような言葉とは裏腹に、感慨深げに、下で出荷されようとしているソラフネを見つめている。
実は、タタラが初めて「材料」などの指揮をとった船である。
ホムラ1 「なんだぁ、それだけか」
タタラ 「私たちは、炎を扱い、あいつを組み立てる…ただそれだけだろう?」
クルリと踵を返して、歩き出す。
ホムラ2 「ま、そうだけどよぉ…タタラの嬢ちゃん」
心配そうに。
タタラ 「…なんだ」
ホムラ2 「……また、戦争が起きるかも知れねぇぞ」
ホムラ1 「しかも、先の戦争よりも……もっとヒデェのが来る…らしい」
タタラ 「………」
タタラの記憶の中にも、戦争の記憶がある。
その戦争の記憶を思い出して、口をつぐむ
フイゴ 「オメェ等何そこでサボってやがる!!」
雷のとどろくような怒鳴り声。
ホムラ1
ホムラ2
「おやっさん!!」
「おやっさん!!」
ナレ 「この男は、フイゴ。ホムラ一族の長であり、タタラの実の父親である。」
フイゴ 「炉の火を見てろって言ったろうが!!」
タタラ 「親父殿、例のソラフネが旅立つ所だ」
言葉自体は硬いが、タタラの右目は嬉しそうに輝いている。
フイゴ 「あぁ、そうか……今日だったか」
タタラ 「だから、見ていた…申し訳ない」
フイゴ 「いや、まぁ……そうか」
そう言うと、男たちと一緒に、フイゴも吹き抜けの下を見下ろしに行く。
ホムラ1
ホムラ2
「全く、おやっさんと来たら、タタラには甘いんだからなぁ…」
「その優しさを俺等にもちょっとは向けてくれよ」
ボショボショと内緒話。
フイゴ 「なんか言ったかぁ?」
ギロリと二人を睨み付ける。
タタラ 「……親父殿」
こそこそと話しかける。手には例の弁当がある。
フイゴ 「ん?どうした」
タタラ 「……弁当……母様が…」
フイゴ 「ワリィな…で…母ちゃん怒ってたか?」
タタラ 「……親父殿、介錯は私がする」
フイゴ 「………切腹…か、母ちゃん…俺が帰ったら家に入れてくれるかなぁ…」
タタラ 「親父殿…諦めろ。今度は掃除機で脂肪吸引されるぐらいで済むだろう」
フイゴ 「……脂肪吸引…か。まぁ、ちょっと腹の周りが…」
ホムラ1 「おやっさんの場合、全体的にやってもらったほうが良いよなぁ」
フイゴ 「あぁ?」
ホムラ2 「そうすりゃちょっとは縮むだろうに」
フイゴ 「うるせぇ、オメェ等とっとと仕事しに行きやがれ!!
 今度のソラフネは冗談言ってる暇はねぇんだぞ!!」
そこに吹き抜けの上の部分から、怒声が響く。
ヨク 「バッキャロォォォォ!!何でそれを早く言わねぇ?!」 運搬低で吹き抜け内部を飛び回りながら
親子喧嘩をしている。
が、それはいつもの事であり、
周りの者からは「おー、今日もやってんなぁ」
と言う声も上がっている。
エン 「だから親父が忘れたのがワリィだろうが!!俺は悪くねぇ!!」
ヨク 「うるせぇ!あいつが怒ったらコエえのはオメェも十分わかってんだろうが!!」
エン 「だったら忘れんなよ!忘れたのは親父だろうがぁぁぁぁ!!」
ホムラ2 「あーぁ、またやってるよ」 その後ろでタタラは仕事の準備に取り掛かっている。
ホムラ1 「揃いも揃って弁当忘れて」
タタラ 「さて……お前等、もっと仕事を増やして欲しいか?」
ホムラ1 「いや、今から行くぜ?!…なぁ、相棒?」
ホムラ2 「お…おう、こりゃぁ…タタラの嬢ちゃんもアネさんみてぇにおっかねぇ母ちゃんになるのも時間の問題だぜ」
ホムラ1 「ちげぇねぇ…!」
タタラ 「なんか言ったか?!」
地下−第3事務所−
地下三階にあるこの工業都市の、産業にたずさわる事務所。
主にここでは、働いている者達の管理や雑用などを行っている。
ニビ
(心の声)
「…またやってる…」
ここまで聞こえてくるソラの親子の喧嘩に、クスクスっと笑う
ジム1 「ニビ!何してる!こっちのを運んでくれよ!」
ニビ 「あ、はーい!」
ナレ 「かくして、三人の忙しい一日が始まる」



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