ニビイロ−第十六話−

※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです


ニビ 25歳前後 一応主人公
詳細不明のサイボーグ。(四肢機械)
本人に関する記憶を一切失っている。
ニビの街の工場では、用務員兼事務の手伝い(いわゆる雑用)の仕事をしている。
基本的には、口数は少なく、穏やかな性格をしている。
エンとタタラを穏やかに見守っているようなタイプ。
今回、ほとんど台詞が無いので、ナレと被りでも可。
エン 20歳前後 「ハコビ/ソラ」の一族の一人
ハコビの頭領の息子。
へヴィスモーカーでドライなようで結構熱血(?)タタラとは家が近所で、幼馴染。
エアフォークで物資を運んで空を飛び回る。
タタラとはよくからかい合う仲ではあるが、若干タタラの兄のような表情を見せることもある。
ザヴィ 20代中盤 ロギザの「天使」の一人。『忘却』
いろいろと忘れているが、根は純粋。もう一人のニビのような感じ。
キュウ 50代中盤 ヨクの兄(エンの伯父)
タタラ 20歳前後 「ホムラ」の一族の一人
ホムラの頭領の娘。女伊達等に鍛冶場で働いている。
口調が男っぽいだけで、中身は列記とした女である。
基本的男らしさを意識した感じで喋る。
アコメ 10代後半。ホムラ一族の娘。
タタラの次に巫女としての素質がある。よって、今は炎の巫女をしている。
本人は代理だと言っている。タタラの事を慕っている。母方の従兄弟。
フイゴ 40代後半〜50代 「ホムラ」の一族の長
タタラの実父。粗野な言葉遣いや態度ではあるが、家族思いでのんびり者である。
大所帯のホムラ一族を纏め上げる男。人間ではないような巨体。
だが、担当する仕事はロウ付け。(本人曰く「隠居」)

キュウとかぶりでお願いします。
ヒサシ 三十代前半 ホムラの一族の一人。
やはり気が荒い。出産間近の妻が居る。
この一族のものでも珍しいぐらいに、頭に血がのぼり易い性格。だが、根はまじめ。
血縁で言えば、サンキリの兄弟の息子であり、タタラのハトコである。

ザヴィとかぶりでお願いします。

ナレ





時代・世界観
舞台背景など
高度科学(高度工学?)と魔法がまだ共存している時代。
舞台となる、工業都市・ニビは、世界でも有数の工業都市。
そこで作られるものは、高評価を得ていた。

その街で暮らすものたちは、ほとんどの職業ごとに、一族に分かれている。
ホムラ一族 フイゴ率いる炎の一族。
炎を扱う事に長けており、またそれを生業とする一族。
フイゴの娘、タタラが頭領代理。
ハコビ/ソラ一族 ヨク率いる空の一族。
風を読む事に長けている。空輸、または運搬艇を使った資材運びを
生業としている。
ヨクの息子、エンは、若手のまとめ役。
タテシ一族 ゲンコの一族。
大工仕事や建設、いわゆる「建てる事」を生業とする一族。
ゲンコは、この中でも期待されている若手。
ソラフネ 飛行機のようなもの。空を飛ぶ船。
ニビの街では、これや準ずる物を盛んに作っている。
兵器等を積み込んだ"戦艦”も作られる。
ソライス
(エアースクーター)
ソラフネと同じ構造で、空を走る。
見た目はバイクのタイヤが無いバージョンみたいなもの。
エンもよく乗っている。
ツクラレ いわゆるサイボーグ。
四肢を亡くした者は、その代わりに機械義肢をつけられるが、
痛みを取り払い、すぐに機械義肢を元の身体のように動かせる代償として、記憶を奪う。







エン 「…おーい!ニビぃ、来たぞぉ!」
ナレ 「砂漠に一台の超小型のソラフネが停まる。運搬艇にもよく似たそれはエンの伯父、キュウの物。
 キュウの話によれば、エンぐらいのころに買ったものだと言うから、相当な年代物である」
ニビ 「あ、エン!ごめんねぇ!」
降りてくるエンに向かって歩き出す。
エン 「ったく、どっか行くときゃちゃんと言ってけって言ってんだろ!?」
ニビ 「だって、僕、サバクが見たかったんだもん!」
エン 「んなもん、ちょっと外に出るだけで見れたろうが!…あ〜、で、そっちのが『友達』か?」
ニビ 「うん!ザヴィって言うんだ。おいで、ザヴィ。こちらはエンだよ。僕の大切な友達なんだ」
ザヴィ 「こんにちは、エン」
エン 「どーも…」
ザヴィと握手を交わす…が、ザヴィの顔を見れば、ニビと同じ顔であることが解って、思わず閉口する。
「…!!」
ニビ 「どうしたの?エン」
エン 「…お前ら、そっくりだなぁ…髪と目の色以外、全部同じじゃねぇか」
ニビ 「え?」
ナレ 「エンの言葉に、ニビはとても驚いていた。見れば、ザヴィの顔は先ほどあった時の顔とは全く別の顔となっている。
 だが、ニビには、先ほど会った時の顔が全く思い出せない…元からザヴィはこういう顔だったとさえ思える」
ニビ
(心の声)
(……さっきは違う顔だったような……でも…フード被ってたしなぁ…)
エン 「ま、世の中にゃ三人は顔のよく似た他人がいるって言うしなぁ」
ニビ 「そうなの?」
エン 「あぁ、そうらしい」
ザヴィ 「偶然だね。僕、ニビとは良い友達になれそうだ」
エン 「仲良くしてやってくれよな。ニビは良いやつだ」
ニビ 「エンも良い人だよ、ザヴィ」
ザヴィ 「うん、とても優しそうな顔をしてる」
柔らかい眼差しを、エンに向ける。
エン 「……いや、そう言われると…ちょっと照れるなぁ…」
素直に照れている。ソラの一族の男に遺伝する鋭い「鷹の目」のせいか、性格はともかく、顔についてはあまり「優しそう」と言われたことがない。
SE(パシャッ) カガミエ機(カメラのシャッター音)
エン 「…ニビ、何撮ってんだ?」
シャッター音でわれに返った。
ニビ 「え?だって、エンが照れてるのって珍しかったから、街に帰ったらヨク親方に見せようと思って!」
笑顔。ニビには悪意はない。本当に珍しかったからとっただけ。
エン 「見せるな…じゃぁ、お前ら並べ。撮ってやるから」
「見せるな」はきっぱりと。
ニビ 「あ、うん!」
エンにカガミエ機を渡して、ザヴィの隣に立つ。
ザヴィ 「…さっきから思ってたんだけど、それなに?」
カガミエ機がどうやら珍しいらしい。
ニビ 「カガミエだよ!カガミエ機!」
エン 「まぁ、とにかく…笑え」
ザヴィ 「…?…う、うん」
ものすごく緊張している。
SE(パシャッ) カガミエ機のシャッター音
ザヴィ 「え…これってどうなるの?」
ニビ 「今ね、これで僕等を写すと、そっくりそのまま一枚の絵みたいに印刷されて、いつでも見られるんだ」
ナレ 「そういうと、ニビは鞄の中から、一冊のアルバムのようなものを取り出す。
 そこには、ニビの身の回りの人間のスナップや風景のカガミエがたくさん貼られていた。
 どうやら、フイゴにこのカガミエ機を買ってもらってから、ニビはカガミエをたくさん撮っていたようだ」
ザヴィ 「へぇ…不思議だねぇ…風景とか、全部そのまま持ってこれるんだ」
エン 「まぁ、記録みたいなもんだな」
ザヴィ 「……記録……記憶?」
エン 「その時の風景とか、ずっと残して置きたい事とかあるだろ?」
ザヴィ 「……あるかも…?」
ザヴィ自身、慢性物忘れのようなものなので、良くわかっていない。
エン 「そういう時に写しとけば、後々見れて良いだろ」
ザヴィ 「そうかも知れないね」
エン 「さて、行くぜ。俺のおじちゃんが、飯作って待っててくれるから」
ニビ 「え、ホント?」
エン 「あぁ…」
ナレ 「エンが答えるよりも早く、ニビはザヴィを引きつれて、エンの乗ってきたソラフネに乗り込んだ」
エン 「……はぁ……」

キュウ 「おう、おかえり。飯できてっぞ」
エン 「ただいま。連れて来た…」
なんかどっと疲れてる。
キュウ 「どうしたよ?」
エン 「なんでもない……って、この匂いは…」
キュウ 「あぁ、オメェが喜ぶと思って、蒸し焼き鳥作っといたぜ」
蒸し焼き鳥…エンの大好物(これさえあれば何もいらないかも)
エン 「おじちゃん、ありがとう!」
キュウ 「良いって事よぉ、なんせ何年ぶりの再会だもんなぁ。これぐらいしかしてやれねーが、勘弁してくれな」
実際、立地条件が厳しいので、一ヶ月に2度ぐらい、エラプアの街に買出しに行くぐらいしか出来ない為、食料の貯蓄は厳しい。
エン 「いやいやいや、これで十分だ!…で、どこにある?」
大好物がそこにあるとなっては居ても立ってもいられない。
キュウ 「まぁ、用意はできてんだけどなぁ…おい、ニビとその友達とやらはどうしたよ?」
エン 「え……?」
家の中には居ない。
ナレ 「外を見れば、なにやらザヴィとニビが屋根を見上げて立っている」

エン 「おーい、どうしたぁ?」
ニビ 「あのね、ザヴィがこれが珍しいって」
エン 「あー?蓄光石がか?」
蓄光石…ニビの街では当たり前のように使われている明かりの役目をする岩。
      普通の蛍光灯と同じぐらいの明るさを持つものから、蝋燭ほどの明かりのモノまである。
      キュウの場合は、多くのハコビ達が迷わぬよう、灯台のような役目として使っているようだ。
ザヴィ 「時々、ピカピカって光るんだもの。何か魔法で光ってるのかな」
不思議そうに、屋根の上でクルクル回るそれを見ている。
エン 「違うって」
ザヴィ 「じゃぁ、どうして光ってるの?」
キュウ 「それはそういう物なんだ。夜になりゃ、もっと明るくなるさ」
3人が戻ってこないので出てきた。
ザヴィ 「すごいね、僕の国まで届くかなぁ」
キュウ 「ははっ、おめぇさんの国がどこかは知らねぇが、届くかも知れねぇな」
ザヴィ 「ホント?」
キュウ 「あぁ、光ってのはな。遮るものがなきゃ、どこまでも飛んでくもんだからな」
ザヴィ 「ふーん…」
キュウ 「ってわけだ。オメェ等さっさと食わねぇと、俺がせっかく作った飯が冷めちまうぞ」
ニビ 「はーい」

ナレ 「エンとニビがそうしている頃、ニビの街では祭りが行われていた。
 夜も明けやらぬうちから、各一族が何台かの輿に巫女達を乗せ、聖地へと赴く。
 明かりは松明しか認められておらず、各一族の物たちが各々松明をもって移動する様は、
 工場の天辺から見ると、まるで鉄の湯が炉から流れ出したかのようだった」
タタラ 「親父殿、大丈夫か?」
ホムラの聖地=かなり高い山。ふいごの身体では、山登りはかなりきつい。
フイゴ 「あぁ、大丈夫だ……」
かなり辛そう。本来、頭領が先頭を歩かねば成らないが、一番最後を歩いている。
タタラ 「親父殿〜…ちょっとダイエットしたほうが良いんじゃないか?」
フイゴ 「そうだなぁ……」
アコメ 「おじ様!宜しかったら輿へお乗りくださいな。私なら歩けますから!」
ナレ 「輿の上から、アコメが言う。
 巫女としての祭り装束に身を包み、化粧も施されている。なんとも艶やかである」
ヒサシ 「ちょっと待て〜アコメ、旦那なんて担げるか!俺らが死んじまうわ!」
ヒサシを始め、ホムラの担ぎ手達からは、激しいブーイングが起きる。
アコメ 「あら、ヒサシ兄様。ホムラの男はそこまで軟弱でしたのかしら」
ヒサシ 「あんなぁ…アコメはどう考えても軽いだろ。だけどフイゴの旦那見てみろや、アコメの5倍はどう考えてもあるだろ!?」
アコメ 「大丈夫じゃないかしら?」
素で。ちょっとアコメは考えが足りない。
ヒサシ 「大丈夫じゃねぇよ!明日から仕事できなくなったらどうしてくれんだぁ!」
タタラ 「まぁまぁ…祭りを成功させたら、ホムラの神もきっとヒサ兄とマサゴ姉と赤ん坊を守ってくれる。
 ホムラ全体を守ってくれる。だからとにかく行くぞ」
フイゴ 「…わりぃなぁ…」
タタラ 「親父殿も、もう少し頑張ってくれ…夜明けまでには神殿に着かないと…」
フイゴ 「あぁ…そうだなぁ…」
ナレ 「この祭りは、半年に1度行われる。もちろん、先の戦争で亡くなった者達の御霊を弔う祭りではあるが、
 街の者たちにとっては、半年間の無病息災を祈る大事な祭りでもあるのだ。」
その場で少し休憩して。(結構な登山だから)
タタラ 「よし、先に進もう」
(SE:村人たちの鬨の声)
ナレ 「アコメの輿の前を行く、もうひとつの輿には、老女(巫女)達が乗っている。
 彼女たちは、ホムラに伝わる祈り歌を歌う。それに合わせて、ホムラの一族たちもいっせいに歌う。
 ニビの街周辺には、そうして各一族から紡がれる祈りの歌声が響き、中心である工場前の広場まで響き合っている」

アコメ 「タタラ姉さま」
タタラ 「ん?」
アコメ 「…私、このお祭りが終わったら、巫女…辞めますわ」
タタラ 「…どうしてだ?」
アコメ 「だって、やっぱり姉さまが相応しいと思うんですもの。私の力なんて、姉さまに遠く及ばない…
 姉様のほうが、炎を扱う力に優れてらっしゃるし…ホムラの神の声なんて、私にはかすかにしか聞こえない…」
タタラ 「買い被り過ぎだ。私には鉄を打つしか能がない…アコメ、今はお前が巫女だ。
 だから、私の方が優れているとか…そういうことはないんだよ。
 鉄を打っているうちに、そんな力なんて弱まってしまったよ…お前しか居ないんだ」
自嘲気味に。何度も書いているが、タタラは本来、巫女としての役目を果たさなければ成らない存在でもある。
それぐらい力はあるのだが、兄弟達が亡くなってしまった今、両親のそばで支えに成らないと思い、その任をアコメに任せている。
アコメ 「姉様…」
タタラ 「……ごめん、アコメ」
タタラは、責任感の中で揺れ動いている。兄弟の代わり、延いては父の代わりにホムラをまとめなければいけない。
だが、巫女としての役目も本来ならばやらなければ行けない。本当はどちらもタタラのやりたい事。
→兄さえ居れば……(ヅチさえ戻れば?)

ナレ 「食事を終えるとニビとザヴィは二人とも眠ってしまった」
キュウ 「…しっかしよぉ……ホムラじゃそんな事になってたんか…」
エン 「あぁ……」
ホムラの事情を話していた…とても重苦しく、深い「事情」を。
キュウ 「フイゴも…そんなになっちまってたか……」
エン 「あぁ……どうしようもなくなっちまって…フイゴのおやっさん……」
キュウ 「……」
フイゴとは昔のなじみ。根っからの良いやつだと言うことを、キュウも十分知っている。
だから、その話の内容が辛すぎて言葉が出ない。
エン 「だから、ヅチ兄ちゃんがさ…生き残ってくれたのは…せめてもの救いなんだろうが…
 だが…今の状態だと…いずれ…タタラは」
キュウ 「そうなる前に、どうにかしてやらねぇとな…いや、これはホムラの問題で、ソラの問題じゃねぇから、
 おいそれとはいかねぇだろうがな……」
エン 「親父も、それで悩んでんだ。戦争以来、タタラも、フイゴのおやっさんも変わらなきゃ行けなかった……」
酒を一杯グイッと飲み干す。
エン 「おやっさんだって辛いさ。辛いのは解ってる。だけどタタラにばっか重いもん背負わせてんのも、おやっさんなんだ」
キュウ 「……」
エン 「ヅチ兄ちゃんさえ戻れば…タタラだって解放される…そんな事は解ってんだ。
 だから…俺…ニビに何度もいろんな所見せた。
 一緒に遊んだガラクタ置き場や、皆で遊んだ川とか…思い出さないかって…ずっと期待してた」
キュウ 「……それが、またヅチがまともな身体を失うことに成っても……か?」
エン 「……じゃぁ、誰がタタラを救ってやれるんだ!?もう、頼みの綱は…それしかないんだ!」
キュウ 「…おめぇが心配してる事はよく解る。
 だがよ、こればかりは、おめぇが幾ら足掻いても、どうなるってことじゃぁねぇんだ」
エンが抱え込んでいた悩みを受け止めた。だが、キュウ…いや、ほかの者がどうにかしてやれる手立てはない。
エン 「……おじちゃん、俺さ……タタラの事、好きなんだ。ガキの頃から…タタラだけを見てきたんだ…
 でも、戦争が来て、やつ等は全部持ってっちまったんだよ…タタラの笑顔も、おやっさんの鉄も……
 兄ちゃんも姉ちゃんも、チク兄もイガ兄も、ディーゼおばちゃんも、カフ兄ちゃんも…みんなみんな……」
また酒を呷る。それでも足りないのか、ボトルの方に手をかける。最後の方は、涙声。
ディーゼ…キュウの妻、カフウ…キュウの息子 (つまりエンの伯母と従兄弟)
キュウ 「……飲みすぎだ」
エンが手をかけたボトルをもぎり取りながら。
→もともと、エンはそんなに飲めるタイプではない。
エン 「なぁ…なぁ、おじちゃん、俺どうしたら良いんだ?
 何も出来ないってんなら、俺、どうしたらタタラを喜ばせてやれるんだ?」
キュウ 「それは、タタラ自身が決めることだ。おめぇは見守ってやれば良い」
エン 「それじゃぁ、いつになるかわかんねーよ!!俺はただ、タタラにもう一度、昔みたいに笑って欲しいだけだ!!」
(SE:テーブルにこぶしを打ち着ける音)
やり場のない怒り。
ニビの街、神殿へ向かう、ホムラ一族。
タタラの顔はいつものように、凛とした表情。
エン 「昔みたいに、泣いたり笑ったり……して欲しいだけだ……」
幼い日の、まだ「あの日」が来る前の、兄姉と過ごした日々。ホムラ兄弟やゲンコも混じって大騒ぎ。タタラの笑顔。
キュウ 「そりゃぁ…まぁ、おめぇの言うことはもっともだ。
 だが、エンよ。おめぇさん、ある事から逃げてるだろ?」
エン 「……」
キュウ 「…今は、見守ってやるしかねぇんだよ。ただ、それだけで良いんだ」
エン 「おじちゃんだって逃げただろ。おばちゃんとカフ兄ちゃんが死んだから…
 それが嫌でここまで逃げてきて、街に一度も戻ってこねぇじゃねーか…」
キュウ 「………すまん」
エン 「…俺はただ……前みたいに皆笑って暮らせれば良いって思ってるだけだ……」
キュウ 「おめぇももう休め……悪い酒だ」
エン 「チクショウ……」
机に力なくうつ伏せる。完全に酔いが回ってきた。
キュウ 「明日になったら、いろいろ変わってるかも知れねぇ…解決するには時間だって必要なんだ…」
そのまま眠ってしまったエンに毛布をかけながら。