ニビイロ−第十五.五話−
※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです
老シスター | 女 | 60代 ロギザのとある街にある教会のシスター。元医者。 「マザー・イーリス」 心優しい、誰からも信頼される。まだ国に余裕があり、寄付などもあった頃には、 貧しい病人などを呼び寄せ世話もしていた(が、続く食糧難、街の人々の疎開などにより、病人たちは死んだ) 次第に酷くなる国内情勢に絶望し、最悪の決断をしてしまう。 |
シスター1 | 女 | 20代後半 先の戦争で軍人だった父が処刑され、お家断絶一家離散の折、マザー・イーリスに拾われる。 「マリー・アザーリア」 規律や取り決めに厳しい性格ではあるが、子供達を一番に考えている。 イーリスを主とおんなじぐらい尊敬している。 |
シスター2 | 女 | 10代中盤 人の役に立ちたいと思い、シスターになる。牧場の娘。 少々内気ではあるが、何事も一生懸命だが、泣き虫。 少し子供の面が残っていて、今回のマザーの決断に一応は合意したが、 まだ納得しきれないようでもある。「マリー・ローザ」 ※子供2を被ってください。 |
シスター3 | 女 | 30代中盤 元売春婦のシスター。 恋人の子を身ごもっていた頃、売春婦仲間で妹のように可愛がっていた娘が、 無残な殺され方をし、それを発見した彼女もショックで流産した。その挙句、軍人であった恋人が戦死。 我が子と婚約者を弔うためにシスターになる。「マリー・リーヴァ」 ※子供1を被ってください。 |
子供1 | 男 | 11歳ぐらい。教会の孤児。 今教会にいる孤児たちの中では、年長の部類に入る。しっかり者の少年。 |
子供2 | 女 | 7歳ぐらい。教会の孤児。子供1の妹と思われる。 |
ナレ |
ナレ | 「ロギザのとある街。かつてこの街は、古都として栄えていた…が、今この街に残っている住民は、 街の中心部にある『教会』に残る者たちだけ。時刻は夕方。どうやら夕食のようだ。 食堂には六名のシスターと十数名の子供たちがそろって席に着いて、食事への感謝の言葉を唱えていた」 |
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老シスター | 「さぁ、頂きましょう…残さず…ね」 | |
子供たちに微笑み掛ける。皆、やせ細っている。老シスターに至っては一番やつれている。(病気の可能性もある) | ||
ナレ | 「いっせいに子供達は食事を始める。美味しそうに無我夢中で食べているが……食卓の上は、明らかに貧しい。 具の無い、色の薄いスープ。そして、小さなパンと、僅かな野菜。 だが、子供達にとってはそれはご馳走に違いなかった。何故なら……」 |
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子供1 | 「マザー!ねぇ、マザー!今日はどうしたの?パンまであるよ?ねぇねぇ!」 | |
パンがあるのが嬉しい。ここしばらく、パンなんて食べてなかった。 | ||
老シスター | 「ふふ、みんなが良い子にしているから、神様が下さったんですよ」 | |
シスターたちの皿には、パンは無い。食料も、シスターたちが駆けずり回って、やっとで手に入れたもの。 | ||
子供2 | 「わぁ!じゃぁ、もっと良い子にしてたら、もっとたくさんパンがもらえるかなぁ!」 | |
子供1 | 「じゃぁさ、みんなでもっと良い子にしよう!たくさんご飯、もらえるよ!だって神様は僕等を見てて下さるんだもの!」 | |
子供2 | 「あたし、もっとシスターやマザーのお手伝いする!」 | |
子供1 | 「みんな頑張ろう!僕たちは良い子だから、もっと頑張ったら、きっと神様は僕等を見捨てたりはしないさ!」 | |
子供達の口からは、「もっとお掃除がんばる!」やら「マザーたちを助けてあげなきゃ!」とかの言葉が出ている。 頑張ったら報われる……そう信じて疑わない。 |
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シスター1 | 「……」 | |
たとえ、頑張ったとしても、今の状況では子供達にこれ以上のご飯を上げることが出来ない…歯痒い。 | ||
ナレ | 「子供達に悟られぬように、シスターたちは皆一様に顔を見合わせて、少し俯く。 3年ほど前までは、子供達にはお腹いっぱい食べさせることが出来ていた。 だが、ロギザの内部では今、内乱が激しくなっており、食料の確保が十分に出来ない状態。収入源である寄付ももらえない状態。 子供達の無邪気な笑顔が、シスターたちの心に突き刺さる…お代わりもさせてあげられない」 |
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しかも、ここは戦場になっている街から10kmと離れていない街。だから皆避難して行った。 | ||
シスター1 | 「食べたら皆、今日はゆっくり寝るんですよ。明日は皆でお出かけしますからね」 | |
子供2 | 「どこに?ねぇ、どこに?!」 | |
お出かけが嬉しい。 | ||
子供1 | 「ルクサの森がいいなぁ…木の実いっぱい取ってこようよ!まだ…あればいいけど」 | |
子供2 | 「キノコもはえてるかな、あたし、キノコスープ食べたい!シスター・リーヴァに作ってもらうの!」 | |
子供1 | 「とってきてたくさん食べよう!…ね!マザー!」 | |
老シスター | 「…そうね、明日は皆、お腹いっぱい食べましょう」 | |
ナレ | 「食事も終わり、子供達は寝静まった真夜中。 シスターたちは暗闇の中、教会の周りでなにやら作業をしていた」 |
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子供達はベッドの中で、幸せそうに眠っている。 | ||
居住棟内の廊下 | ||
シスター1 | 「マザー・イーリス…終わりました」 | 子供達を起こさないように、静かに。 |
シスター2 | 「こちらも、終わりました…」 | |
ほかのシスター達も一箇所に集まっている。 | ||
老シスター | 「マリー・アザーリア、マリー・ローザ。皆、ご苦労様…」 | |
シスターたち、頷く。何か覚悟を決めている様子。 | ||
シスター2 | 「…マザー・イーリス…本当に…良いのですか?子供達が…」 | |
老シスター | 「……良いのです。清き命を守らねばならぬ…それは主の教え。 ですが…これ以上、子供達につらい思いをさせるわけには行きません…」 |
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シスター2 | 「ですが…ですが、マザー…これでは余りにも…」 | |
シスター1 | 「マリー・ローザ…あなたの気持ちも解るわ… でも、あの子達に食べさせてあげられるパンは一欠けらも、この街にはもう無いのよ」 |
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シスター2 | 「だけど………」 | |
シスター3 | 「祈りを捧げて、空からパンやお菓子が降って来るなら、いくらでも祈るわ…子供達のためですもの。 売る相手が居るのなら身体を捧げても構わないわ。 でも、もう…無理なのよ。…お願い、解って…あなたも同意した筈よ」 |
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ナレ | 「シスターたちは沈黙する。誰も好き好んで、この道を選んだ訳ではない。 子供達の笑顔が見たい一心で、彼女たちは今日まで奮闘してきた。 空き地に畑を作って見る事もしたが、気候の厳しいこの街ではほとんど無意味だった。 その上、僅かに実った作物さえも、収穫前に、兵士や難民に盗まれてしまう。 そして、僅かに残る財産もすべて売り払ってしまい、とうとうすべてが底をついてしまった。財産だけでなく、力…気力さえも。 もう、食べさせてやれる術は彼女たちには残って居ない……そして、選んだ道は…」 |
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老シスター | 「さぁ、行きましょう…ここで話していれば、子供達を起こしてしまいます」 | |
聖堂内の装飾品は、もう、中心にある聖母像しか残って居ない。(notキリスト教…ここは「異世界」なので) すべての装飾品や壁画などは、子供達の為に売り払ってしまっている。二束三文で良いように買い叩かれてしまったので、あっという間に無くなった。 |
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シスター2 | 「……」 | |
泣いている。一度は決断したものの、やはり子供達の幸せそうな寝顔を見てきた後は、これから起こる事に不憫さと罪悪感を感じずには居られない。 | ||
老シスター | 「さぁ、マリー・ローザ、無くのはおよしなさい…悲しむ人は幸いです。その人は…」 | |
シスター1 | 「マザー…!」 | |
言葉が続かない。「悲しむ人は幸いです、何故ならその人は救われるから」と言う祈りの言葉は、もう、彼女たちには何の意味もなさない。 | ||
老シスター | 「……祈りましょう」 | |
静かに。 | ||
シスター3 | 「…もう、それしか道が無いのよ…マリー・ローザ。 主はもう、この地では私たちを救うことを諦めてしまわれた……」 |
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諭すように…この「諦めてしまわれた…」まではシスターの顔。次の言葉は、素。 | ||
「…だいたい、あたし等を見捨てた旦那が居る楽園に、殴りこみに行って何が悪いのさ。 子供等に飯も満足に食わせてやれない甲斐性なしさ。ケツのケバまで抜いてやらなきゃ気がすまないでしょ」 |
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シスター2 | 「……」 | |
ちょっと笑う。 | ||
シスター3 | 「って訳だ。旦那のとこに行くんだから、そんなベソかいてちゃダメだよ。せっかく皆で楽園に行くんだ。 あんた、まだあの子等に心配さす気かい?」 |
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マリー・ローザの涙を指でぬぐってやる。マリー・ローザは泣き虫で、よく子供等にも心配されていた。 | ||
シスター2 | 「…マリー・リーヴァ……ありがとう……」 | |
老シスター | 「……さぁ…皆、手を合わせて……私たちに出来る、主に捧げる最後のお祈りです」 | |
シスターたち、そろって跪き、祈りの姿勢。 | ||
老シスター | 「天におられる我等が神プリェーダク・ボーフよ…人の子等の為に楽園の門を開き給え…我等に安息を……」 | |
シスター達 | 「……パスリェードニ・マリートヴァ……」 | |
直訳すれば、『最後の祈り』 ※シスター1の方、お願いします。 | ||
(SE:爆発音) | ||
爆音と同時に、教会が崩れ去る。ロギザの教会と領主屋敷には自爆装置が標準装備。→もしもの場合は、集団自決。→楽園へという思想 |