ニビイロ−第十四話−

※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです。
(081029完成)


ニビ 25歳前後 一応主人公
詳細不明のサイボーグ。(四肢機械)
本人に関する記憶を一切失っている。
ニビの街の工場では、用務員兼事務の手伝い(いわゆる雑用)の仕事をしている。
基本的には、口数は少なく、穏やかな性格をしている。
エンとタタラを穏やかに見守っているようなタイプ。
ツクラレになった際に、知能や精神がリセットされているので精神知能共に10歳〜13歳程度
エン 20歳前後 「ハコビ/ソラ」の一族の一人
ハコビの頭領の息子。
へヴィスモーカー。斜に構えているようで結構熱血(?)タタラとは家が近所で、幼馴染。
エアフォークで物資を運んで空を飛び回る。
タタラとはよくからかい合う仲ではあるが、若干タタラの兄のような表情を見せることもある。
キュウ   50代中盤 ヨクの兄(エンの伯父)
ザヴィ 20代中盤 ロギザの「天使」の一人。『忘却』
いろいろと忘れているが、根は純粋。もう一人のニビのような感じ。
ナレ





時代・世界観
舞台背景など
高度科学(高度工学?)と魔法がまだ共存している時代。
舞台となる、工業都市・ニビは、世界でも有数の工業都市。
そこで作られるものは、高評価を得ていた。

その街で暮らすものたちは、ほとんどの職業ごとに、一族に分かれている。
ホムラ一族 フイゴ率いる炎の一族。
炎を扱う事に長けており、またそれを生業とする一族。
フイゴの娘、タタラが頭領代理。
ハコビ/ソラ一族 ヨク率いる空の一族。
風を読む事に長けている。空輸、または運搬艇を使った資材運びを
生業としている。
ヨクの息子、エンは、若手のまとめ役。
タテシ一族 ゲンコの一族。
大工仕事や建設、いわゆる「建てる事」を生業とする一族。
ゲンコは、この中でも期待されている若手。
ソラフネ 飛行機のようなもの。空を飛ぶ船。
ニビの街では、これや準ずる物を盛んに作っている。
兵器等を積み込んだ"戦艦”も作られる。
ソライス
(エアースクーター)
ソラフネと同じ構造で、空を走る。
見た目はバイクのタイヤが無いバージョンみたいなもの。
エンもよく乗っている。
ツクラレ いわゆるサイボーグ。
四肢を亡くした者は、その代わりに機械義肢をつけられるが、
痛みを取り払い、すぐに機械義肢を元の身体のように動かせる代償として、記憶を奪う。







ニビ 「うっわぁ!ねぇねぇ、エン!すっごいよ!」
窓の外を見てはしゃいでいる。旅に出てからずっとこの調子
エン 「おいおい…ニビ、座ってろよ。もうすぐ着陸するぞ…舌噛んで泣いても知んねぇぞ」
苦笑しつつ。ニビが『ニビ』になる前の夢と、兄の夢を考えると感慨深い。
ニビ 「ねぇ見て見て!エン!あたり一面黄色いよ!砂だよね!
 砂の黄色と、空の青いのが綺麗だねぇ」
エン 「ニビ…あれは砂漠だ。『さ・ば・く』。砂が集まって出来てんだ」
ニビ 「へぇ〜……あ、あれは何かな!ねぇねぇ!エン〜!」
ニビの指差した方向にはピラミッドのようなものを発見する。
エン 「あ〜…あれはな、王様の墓だ。」
ニビ 「王様のお墓?…王様は一人だよね?なんであんなに大きいの?」
エン 「なんかなぁ…えーっと、兄ちゃんから聞いたんだけど…でっかければでっかいほど、
 その王様が偉いって事らしいぞ…あとは聞くな、知らねぇから」
いつもならば、知ったかぶりをする余裕ぐらいはあるが、初めての大型ソラフネなので、緊張している。
→余裕を装ってるが、実はかなりのいっぱいいっぱい。王と一緒に殉死者なども一緒に生き埋めにされる事を、エンは知らない。
ナレ 「二人が街を旅立ってから、四日が過ぎた。
 二人を乗せた大型のソラフネは今、砂漠の国・エラプアの上空を飛んでいた。
 旅に出てからずっと、ニビは見るもの触れるもの全てに興味を示し、はしゃぎ回っていた。
 そして、それを相手するエンもまた、見るものに興味を示さずには居られなかった」
ニビ 「ねぇねぇ!あれ、何やってるのかな!」
ナレ 「ニビの指差した方向には、建造中の王墓があった。その周りには、たくさんの人々が居た」
エン 「あれは王様の墓作ってんだろ……」
ニビ 「…へぇ〜…ね、ね、もっと近くで見てみたいな!」
エン 「しょうがねぇなぁ……ちょうど給油しようと思ってたところだから…ちょっとだけだぞ?」
ニビ 「わぁい!いっぱいカガミエを撮るんだ〜!ねぇ、エンも一緒に撮ろうよ!」
ナレ 「はしゃぐニビの手には、カガミエ機があった。
 それは、旅立つ時に、フイゴが餞別に…と、買い与えたものである」
エン 「お前…勝手にどこかに行くとかは無しな。
 タタラ居ねえし、探す奴俺一人しかいねぇんだからな!」
ニビ 「うん、解ってるよ!ケイタイヨビバコ、フイゴ親方に買ってもらったし、
 もし居なくなったらそれに連絡してくれれば良いよ!」
ケイタイヨビバコ……ヨビバコ(電話的なもの)のケイタイ版。つまり、ケータイ電話のようなもの。
今迄ニビは家にはヨビバコはあったが、自分用のケータイは持ってなかった。
(仕事で使うのは工場から支給されてはいたが、メールとかはできなかった)
旅先ではぐれて連絡が付かなきゃ大変だろうと、フイゴがそれも買い与えた。
初めてケータイヨビバコを自分用に持つので、それもちょっと嬉しいニビ。旅立つ前にタタラや街の人たちに、「かけてね!」としきりに言っていた。
エン 「ま、それもそうか……よし、降りるぞ…ちゃんと座ってろ!ホントに舌噛んでも知らねぇぞ」

ナレ 「地平線まで続く、広大な砂漠にぽつんと一軒だけ、王墓関係以外での建物があった。
 それは、給油する為の店であった」
ソラフネがそこに着陸すると、建物の中から、初老の男が出てくる。
その顔は、ヨクとよく似ている。
キュウ 「えっれぇ、でっけぇフネだなぁ」
もう10年以上ここで仕事しているが、このぐらいのソラフネは稀。
エン 「おっちゃん!満タン頼むぜ!」
出入り口からポンと飛び降りてくる。
キュウ 「了解!…って、おー?!どこのハナタレ小僧かと思えばエータじゃねぇの!」
エン 「…いや、俺はその弟でエン…って、あー!!キュウおじちゃんじゃねぇか!!」
何年も会っていなかったおじちゃん、意外な再会が嬉しい。
キュウ 「エン!でっかくなったなぁ!」
エン 「おじちゃんこそ…ココだったのかよ!店やってるって!」
キュウが店をやっているのは知っていたが、ここだとは知らなかった。
キュウ 「ヨクから聞いてなかったのかぁ?
 …あの泣き虫エンもこんなでっけぇのを運ぶようになったかぁ…そりゃそうだなぁ…俺も年とるハズだぁ」
笑いながら頭をガシガシと撫でる。(キュウは街を出てからほとんど帰ってない)
エン 「…!! そうだよ!でかくなったんだから頭撫でんな!」
キュウ 「ワリィワリィ!ま、給油する間中入ってな。茶ぐらい出すぜ」
エン 「あぁ、そうさせてもらうよ…って、ニビー!!」
ニビが降りてこないことに気が付いて振り向く。
ニビ 「エン〜、これ、どうやって降りるの〜?!」
エンは飛び降りたが、飛び降りる勇気はニビにはない。(高さ4メーター以上)あたふたしている。
←エンの場合は、ソラの一族は空を飛び回る仕事をしていたり、
  もしものために、かなりの高さからパラシュートのようなもので降りる訓練もしているので、高さ慣れしているのもあるが、やっぱりソラの能力。
エン 「あ〜…そこに縄梯子あんだろ〜。それで降りてこい!」
ニビ 「解った〜!」
発見してそれを下におろして、降りだす。

キュウ 「アイツ…」
降りてくるニビを見て。(→ニビの正体をよく知っている)
エン 「今はニビだ」
キュウ 「そうか、助かったんだなぁ」
エン 「……あぁ」

ナレ 「キュウは、戦争以来、この場所で給油屋を開いて生活している。
 戦争で妻と子を失ってしまい、そのショックが大きく、街を離れてしまったのだ。
 元々は、ソラの一族の長である筈だったが、幼い頃から彼は弟のヨクにその席を譲っていた。
  三人は今、店の中で世間話をしている。積もる話がたくさんありすぎて、取り留めのない話が続いていた」
エン 「……でさぁ、焦ったのなんのって!最近の奴はすぐ無茶しようとしやがる。
 教わりもしねぇで自分で最初からできると思ってんのかね。」
仕事の愚痴。こう見えても、エンはソラの若い奴を仕切っている。つまりは若頭。→新人の教育とかも担当している。←新人の話をすると若干年寄りくさくなる。
つい最近、現場に出た少年が、無茶な運転(エンやヨク、他のベテランが普通にやっているような高度な技)を見よう見真似でしようとして、怪我をしたと言う話。
キュウ 「は〜…そりゃヤバいなぁ。まぁ、大事に至らなくて良かったなぁ…で、ヨクはちゃんとやってんのか?」
エン 「いや、俺も親父に言ったんだけどなぁ…『お前に任せてあるんだから、お前の力で何とかしろ』…だとさ。
 たまにはオジキも街に帰ってきて、親父にガツーンと言ってくれよ!」
キュウ 「そうさなぁ…だがよ、ヨクもおめぇに成長して貰いてぇって思ってるから、そう言ってんじゃねぇか?」
エン 「…ま、そうだとおもう…親父にも考えがあるだろうし。あ、でも、ヤバい時にはちゃんと親父が出てきてくれるぜ?」
キュウ 「ヨクも末っ子のおめぇが何だかんだで可愛くてしょうがねぇんだよ」
エン 「す…末っ子言うな!それに、厳しいかと思えば、偶にものすげぇ過保護にされるからこっちも溜まったもんじゃねぇっつの!」
キュウ 「まぁ、ヨクもヨクでアイツもおめぇ位の頃はそうやって親父に怒鳴られたもんさ…あぁ…もう、しばらく帰ってねぇなぁ…
 あ、そうだ、フイゴんとこのタタラ嬢もデカくなったろ?
 ありゃ、こーんなちっちぇえ頃から可愛いかったからなぁ…母ちゃんも美人だし……
 相当大変な感じになってんだろ?なにやってんだ、今。もっかしてホムラの巫女さんかい?」
エン 「…アイツは、鉄打ってるよ…」
キュウ 「……そうか……フイゴはどうしてる」
エン 「なんとか立ち直ってる…だけど、もう鉄は打ってない……」
キュウ 「……そう、か……アイツの鉄は良い鉄だったんだがなぁ…」
エン 「……その分、タタラが頑張ってる…兄ちゃん達の分まで、一人で頑張ってるよ。
 …今のニビの街の鉄は、タタラとホムラの奴等が、必死で何とかしようと頑張ってる鉄だ…」
キュウ 「……」
テーブルの上で手を組んだまま、何か思うところが在るのか、窓の外を見ている。
エン 「……ま、良いじゃねぇの!今は何だかんだで上手くいってるよ!」
話をそらすように、努めて明るく。
キュウ 「ところで……」
エン 「ん?」
キュウ 「……ニビは…どこ行った?」
エン 「…え?!」
キュウの言葉に、辺りを見回して居ないことを確認。
「…ニビーーーーーーー?!」
エンの叫びが、青い空に響く。

ナレ 「その頃、ニビは一人で砂漠を歩いていた。
 エンとキュウが長い話をし始めてしまった為、二人の話を聞いていたのだが、
 見て廻りたいと言う欲求に打ち勝てず、ニビは外に出たのだった」
ニビ 「どこまで行ってもサバクだぁ…」
ナレ 「もうどれだけ歩いただろうか、ニビは砂漠の真ん中で呆然と立っていた。
 カガミエを何枚か撮ってはしゃいだりもしていたのだが、しばらくたって見ると、少しの不安が心に湧いた」
ニビ
(心の声)
『……こんなに遠くに来ちゃった……エンの伯父さんのお店、あんなに小さく見える……』
ナレ 「見れば、エンの伯父の店は、砂漠の彼方…点のように見えるだけとなった。
 だが、ニビは不安よりも冒険をしたいと言う好奇心の方が大きかった」
ニビはサクサクと進んでいく。水筒には冷たいお茶もいれてあるし、少しの食料(パンやお菓子)と、財布には金も持っているので、大丈夫だろうと思っている。
ニビ 「…あれ、あんなところに人が居る」
‐ニビの視線の先にはいつの間にか砂漠のどまんなかにそぐわない、真っ黒い布で身体全体を覆った男が立っている。
ニビ 「おーい!」
ナレ 「ニビの声に、視線の先の男は気づいたようで、こちらに向かってくる」
ニビ 「こんなところで何をしてるんですか?」
こんな所で何かをしている=怪しいとかそういう概念は、ニビには無い。純粋な好奇心。
ザヴィ 「…さぁねぇ…んー……君は、何をしてるの?」
ニビ 「僕はちょっと探検中です!」
ザヴィ 「ふぅん…こんな所で楽しい?」
ニビ 「うん!ものすごく!」
ザヴィ 「ふーん……」
ザヴィは、自分が何者であって、またどこに行けばいいのかもすっかり忘れている。ある意味こうして楽しんでいるニビが羨ましい。
ニビ 「僕はね、ニビの街から来たんだ。あなたは?」
ザヴィ 「僕?………えーっと……どこだっけ……」
ニビ 「…忘れちゃったの?」
ザヴィ 「うん」
ニビ 「…長い旅をしてきたのかな」
ザヴィ 「…それも解らない」
ニビ 「………」
ザヴィ 「………」
ニビ 「記憶喪失?君も、僕と同じように、ツクラレなのかな…」
ザヴィ 「『ツクラレ』?」
ニビ 「うん、ほら…僕の手見て」
ナレ 「ニビが手を差し出すと、男はそれをまじまじと見つめた」
ザヴィ 「…鉄の手?」
ニビ 「うん、僕はね。両腕両脚、全部が作り物なんだよ。僕の街では、僕みたいな人を『ツクラレ』って言うんだ」
ザヴィ 「ふぅん…じゃぁ、僕もツクラレかな」
ニビ 「君も?」
ザヴィ 「僕や他の兄弟達は、人の手によって作られたって事だけは覚えてる」
ニビ 「……命を?」
ザヴィ 「あぁ…そう。命がね、ツクラレなんだ」
答えを得たように。答えを得て嬉しい。
ニビ 「命が…ツクラレ……」
ナレ 「ニビには、その男の言葉が理解できなかった。
 そもそもニビの街では、いろんなところが「ツクラレ」でも、『命』自体がツクラレの人間なんて居ないのだ」
ザヴィ 「僕等、ツクラレ仲間なんだね」
とても嬉しい。噛みしめるように。
ニビ 「…うん…? そうかもしれないね」
目の前の男が嬉しそうなので、ニビも笑顔になる。
ザヴィ 「…君、名前はなんって言うの?」
ニビ 「僕は、ニビ。ニビの街のニビ」
ザヴィ 「…僕は………ざ…ん?ざ……なんだっけ」
ニビ 「もしかして、君、自分の名前も忘れちゃったの?」
ザヴィ 「ちょっと待って、思い出すから…ザブ…ザ…あぁ、ザヴィ!僕の名前はザヴィだよ」
ニビ 「よろしくね!ザヴィさん!」
ザヴィ 「よろしく、ニビ」
ナレ 「二人は手を取り合って、笑みを交わし、その場に腰をおろして再び話を続ける。
 ザヴィと言う青年には行くあてがないと言うことだけは解った」
ザヴィ 「君はどこに行くんだい?どうやら、一人では無いみたいだけど?」
ニビ 「えっとね、ドギルに行って、あのソラフネを届けた後、ツギルで医療物資を買って帰るんだ」
ザヴィ 「ニビの街では医療物資は作ってないのかい?」
ニビ 「うん、ニビの街は大きな工場だけど、作ってるのはソラフネとか、機械が多いかなぁ…鉄とかも作ってるけど…」
ザヴィ 「お医者は居るんだよね?」
ニビ 「うん、勿論…君の生まれたところは?」
ザヴィ 「……僕は、生まれたところの事情しかよく解らない。それすらも忘れちゃってるんだけど…」
ニビ 「……」
ザヴィ 「僕が生まれたところはね、サボールって呼ばれてた」
ニビ 「サボる?」
ザヴィ 「僕の国の言葉では、大聖堂って意味らしいよ」
ニビ 「教会?」
ザヴィ 「似たようなものだね。僕等はね、天使なんだって」
ニビ 「天使?…って、あの羽の生えた?」
じーっと、ザヴィの背中を見ている。
ザヴィ 「うん……ってどうしたの」
ニビ 「羽、生えて無いね」
ザヴィ 「…うん、生やし方…忘れたの」
なぜちょっと恥ずかしそうに。本来なら生やす事も可能……なのかもしれない。
ニビ 「そうなんだ」
ちょっと残念。
SE(ケータイヨビバコの着信音)
ニビ 「あ!エンだ!」
エンからと言うよりも、ヨビバコが鳴ってるのが嬉しい。
ザヴィ 「…エン?」
ニビ 「うん、僕の友達!……もしもし?」
エン
(受話機越)
『バッカヤロー!!おめぇどこに居るんだ!!すぐ戻って来い!!』
ニビ 「…!!」
いきなりの大声にビビッて固まっている。
ザヴィ 「どうしたの?」
エン 『あー…怒鳴って悪い。で、お前今どこに居るんだ?!』
ニビ 「砂漠のど真ん中」
エン 『…マジか?!…すぐ迎えに行く!』
ニビ 「場所、わかるの?」
エン 『あったりめーだろ!!おめぇには迷子札がつけてあんだから!!』
ナレ 「ニビのような重度のツクラレには、いつ何が起きてもいいように探知機のようなものがつけてあるのだ。
 普段は電波を発する事もないし、居場所を特定する事は出来ないが、一定の距離以上特定の人物から離れていると、
 自動的に居場所を知らせる電波が発信される仕組みとなっている」
ニビ 「あ、そうだったねぇ。ねぇ、エン」
エン 『なんだよ、ニビ』
ニビ 「友達できたよ!」
エン 『はぁ?!』
砂漠のど真ん中でどうして友達が出来るとか出来ないとか。
ニビ 「だから一緒に連れてってもいいよね!ね、エン!」
エン 『……お前……』
いきなり会った人を連れて行けとか連れて行かないとか、むしろその「友達」とエンはまだ会った事はない。
ニビ 「じゃぁ、待ってるね!」

エン 「なんだよ!バカヤロー…ったくもー!!」
ボヤキながらベルトバックにケータイをしまい、胸ポケットから煙草を取り出して火をつける。
…イライラしていてヒツケ(ライターっぽいもの)がなかなか火を出さない。
キュウ 「おー?ニビがどうしたってよぉ?」
笑いながら自分のヒツケで火を付けてやる。
エン 「はー…あんがと。…なんか砂漠のど真ん中に居て友達ができたのでその友達も一緒に連れてって良いでしょ…
 って遠足じゃねー!!果物はおやつじゃねー!」
「はー」はタバコの煙を吐き出した音。
キュウ 「はははっ、まぁいいじゃねぇの。乗せてってやりゃぁよ」
エン 「はぁ?!マブで言ってんのかよ!?」
キュウ 「定員二名ってわけでもねぇんだろ?」
エン 「まぁな…だがよぉ」
父の教えがある。それはハコビ/ソラ
それは「ソラフネを長距離で運搬している最中にもし困っている人がいたら乗せても良いが、その人間の状態や考えていそうなことを見極めてからにしろ。
     じゃないとそれは自分で危険を抱き寄せてると一緒のことだ」と言う教えだった。
エン 「……なぁ、おじちゃん…」
キュウ 「ん?」
エン 「本当に乗せてってもいいのか?」
大好きな伯父は、ハコビの仕事から離れ、その教えさえも忘れてしまったのかと、少し悲しいが、それも仕方が無い気もしている。
キュウ 「自分で見極めてから…だけどな。旅は道連れが多い方が楽しいぞ!」
バシバシッとエンの背中を叩く。
エン 「うん…じゃぁ、迎えに行って来る!ちょっとおじちゃんのフネ貸してくれよ!」
頷いて、手を振ってドアを開けて出て行く。
キュウ 「あぁ!気を付けてなぁ!メシ作ってまってるからなー!」
手を振ってエンを見送る。