ニビイロ−第十三.五話−

※下に書いてあるのはト書きです。
※アドリブを入れるのは自由ですが、台詞の意味などは変えないでください。
※3番タイムなどに、自分の役の台詞とト書きだけでも良いので、ちゃんとチェックしてから演じてください。
※基本的に、色のついたセルは、ト書きです
(081008完成)


ジズニ 外見年齢8歳。
ロギザの天使
善悪の判断は付いてないと言う設定があります。
とにかく無邪気にお願いします。
スミェルチ 外見年齢8歳。
ロギザの天使。ジズニの双子の妹。
ジズニに同じく。善悪の判断はまったく付いてません。
無邪気です。
40代
片足が悪く、杖を付きながらも、妻と協力して宿屋を経営する。
善良であり、丁寧な性格をしている。
40代
恰幅のいい、笑顔の似合う母親。料理上手で、夫を支えて宿屋を切り盛りする母。
一言しか台詞が無いので、ジズニかスミェルチと被りでお願いします。
息子 10代中盤→20代
両親思いの少年。

男1 父と被り 刑事
男2 息子と被り 刑事





時代・世界観
舞台背景など
高度科学(高度工学?)と魔法がまだ共存している時代。
舞台となる、工業都市・ニビは、世界でも有数の工業都市。
そこで作られるものは、高評価を得ていた。

その街で暮らすものたちは、ほとんどの職業ごとに、一族に分かれている。
ホムラ一族 フイゴ率いる炎の一族。
炎を扱う事に長けており、またそれを生業とする一族。
フイゴの娘、タタラが頭領代理。
ハコビ/ソラ一族 ヨク率いる空の一族。
風を読む事に長けている。空輸、または運搬艇を使った資材運びを
生業としている。
ヨクの息子、エンは、若手のまとめ役。
タテシ一族 ゲンコの一族。
大工仕事や建設、いわゆる「建てる事」を生業とする一族。
ゲンコは、この中でも期待されている若手。
ソラフネ 飛行機のようなもの。空を飛ぶ船。
ニビの街では、これや準ずる物を盛んに作っている。
兵器等を積み込んだ"戦艦”も作られる。
ソライス
(エアースクーター)
ソラフネと同じ構造で、空を走る。
見た目はバイクのタイヤが無いバージョンみたいなもの。
エンもよく乗っている。
ツクラレ いわゆるサイボーグ。
四肢を亡くした者は、その代わりに機械義肢をつけられるが、
痛みを取り払い、すぐに機械義肢を元の身体のように動かせる代償として、記憶を奪う。







ジズニ 「むかし、むかし…ロギザの山奥の村。一軒の宿屋がありました。
 その村は交通の要として栄えて居て、その宿屋もとても繁盛していました」
スミェルチ 「その宿屋の夫婦には、一人の息子が居りました。
 息子は、両親を助けてよく働きました」
ジズニ 「毎日が、幸せな時間でした。
 片脚が悪くても、丁寧な性格の優しい父さんと、料理上手で笑顔が素敵なふとっちょ母さん。
 雪で閉ざされる季節が来ても、ペチカの炎が村の家族達を温めました。
 春には野山にたくさんの花が咲きます。
 息子は、そのふるさとが大好きでした。村の友達や、両親達と、永遠にそのときを過ごせる物と思っていました…」
スミェルチ 「ですが、ある時、新しい道が、村から遠く外れた場所に出来上がりました。
 交通の便も、道の質も良いその道を、今までの旅人達は利用するようになりました」
ジズニ 「そうして……村は寂れて行ったのです。
 それでも何とか人々は気を持ち直して生きていこうとしました。
 質の良い水が、村の外れから湧き出したからです。それを売って生きていこうとしたのです。
 ですが、世の中そう簡単には行きません…」

「どうしても…どうしても出て行くのかい?」
息子 「あぁ……このままじゃ、僕達みんなのたれ死んでしまう……母さんも痩せちゃったじゃないか。
 僕、街まで行って仕事して金稼いでくるから…絶対、戻ってくるよ、母さん」
「……すまん、私の脚が悪いばかりに……」
息子 「大丈夫だよ、父さん。僕が帰ってくるまで待っていて。ね?」

ジズニ 「そう言って息子は出て行きました。吹雪の吹き荒れる、冬の夜の事でした。
 それから……時は何年も過ぎて、村は荒れていくばかりでした。
 太っちょ母さんと優しい父さんの宿屋も、経営が危うくなっていきました……。
 ……このままでは、坊やが帰ってくる場所が無くなってしまう。そんな事はいけない。
 その思いが、善良な両親を、悪魔の道へ誘い込んでしまいました……」
スミェルチ 「たまに泊まりに来る客の食事に毒を盛り、その荷物を奪って、生計を立てるようになったのです。
 都合のいい事に、宿のありかは村の出口。
 しかも、見ず知らずの旅人が一人二人居なくなろうが、誰も気にも留めなかったのでした」
ジズニ 「それから何年もするうちに、村には人がほとんど居なくなりました。
 そして、寂れた村にそぐわない位、宿は立派な物となっていました。
 両親は、もう、一人殺すも二人殺すも同じ……と言う考えになり、
 太っちょ母さんと優しい父さんは、とうとう悪魔になってしまいました。
 坊やが旅立ってから、しばらくして、二人にはもう一人、坊やが生まれたからです。
 小さな坊やを食べさせて行くために、そして、上の坊やの帰る場所を残すために…」
スミェルチ 「そうしている内に、また『獲物』がやってきました。
 大きなカバンに、とても整った身なり。青年は、機械のセールスをしていると言いました。
 仕事の事が楽しいと、太っちょ母さんと優しい父さんに話し、小さな坊やを可愛がりました。
 おいしい、おいしいと、太っちょ母さんの毒入りスープを何杯もお代わりし、そして朝には、やっぱり冷たい屍になっていました。
 死体を片付けようとしていた両親を、坊やは見ていました」
ジズニ 「すると、いつもならすぐに解体して、谷に母さんが捨てに行く筈なのに、その日はいつもと違うようでした。
 たくさんのお客さんが、やってきたのです。お客さん達は、お父さんとお母さんを連れて行ってしまいました。
 坊やはペチカのそばでずっと見ていたのです。大人達は言います」

男1 「……これは、酷い……」
男2 「…なんて事だ、最後の餌食がよりによって、実の息子だなんて……」
男1 「…それにしても…」
男2 「こんな小さな子供の前で……」
男1 「それにしても…これは…札束と土産物…か」
男2 「…そう言えばあの青年は、数年前に出稼ぎに出ていたらしいな…それがこの有様だ…」

ジズニ 「なんと憐れな話なんだろう…と、大人達は口を揃えて言いました。
 青年のカバンには、たくさんのお金の束と、お土産物。そして名刺には、数年前に出て行った坊やの名前が記されていたのです。
 ちょっとイタズラ好きの坊やは、数年ぶりに会う両親をびっくりさせたかったのでした。
 少年から大人へと成長を遂げて容姿の変わった自分を、両親が解ってくれるだろうかと言う期待と心配を胸に抱きながら、故郷の地を踏んだのでした」
スミェルチ 「しばらくすると、街の広場。太っちょ母さんと、片足の悪い優しい父さんは、小さな坊やの目の前で縛り首になりました。
 小さな坊やは、お兄さんである上の坊やが勤めていた機械工場の夫婦に引き取られ、幸せに幸せに暮らしましたとさ」
ジズニ 「優しい両親は、『生』きるために殺したのか」
スミェルチ 「それとも、『死』に行く命を肥やしにして生きたのか」
ジズニ 「坊やには解りませんでしたとさ」
スミェルチ 「とさー」

ジズニ 「ウフフフ…」
スミェルチ 「アハハハ…」
『楽園』で飛び交う双子の天使。